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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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夏か冬に向けて教師と生徒パロをきちんと書ききろうと思いまして、ぽつぽつ小出しにしていきたいと思います^^
ブログでは同じ設定の単発物がぽんぽん載るなあくらいの感じになるかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです><

最終的には本にしたい……です。どうなるかな。



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最近、ゼリーの中ではゆずが一番好きです。
桃も好き。リンゴも好き。
ちょっと味が濃いめなのは、だんだん苦手になってきました(´ワ`)

そんなわけで脈絡もなく、教師と生徒パロのエドリディです。現代です。とくに教師やってるわけでも生徒やってるわけでもないですが。
連載の口直し(?)にどぞー^^*



拍手ログです^^
伯爵と妖精パロ、教師と生徒より。

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 深夜。自室でカタカタとパソコンのキーを打ちながら、エドガーは頻繁に漏れ出したあくびをまたかみ殺した。
 教師の仕事は、エドガーにとっては大して苦にはならない。資料を作るのも授業の準備をするのも、真面目に取り組めばそこまで時間を取られずに終わらせてしまえるのだから、一般企業に勤めるよりもかなり楽な思いをしていると思う。
 ではなぜ今日はこんなに遅くまで、眠い目をこすりながら仕事をしているのか。
 その原因を思いながら、エドガーはさっさと終わらせてしまおうと、パソコン画面を見る眼差しに気合いを入れた。
 早く終わらせて、早く寝室に行きたい。
 そうして、そこで眠る愛しい婚約者の隣に滑り込み、明日は一緒に朝を迎えるのだ。

 高校教師のエドガーと、その教え子であるリディアは婚約者同士である。学校でも学園長以外はこの関係を知らないという状態で、なぜリディアがエドガーの家に泊まりに来ているかというと話は簡単で、リディアの家が改修工事をすることになったということなのだ。
 改修工事が終わるまでは少なくとも台所と風呂とトイレが使えなくなるらしい。一、二週間もあれば終わるため、その間カールトン教授は外国へ出張へ行き、リディアはエドガーの家で過ごすことになったのである。
 もちろんリディアは渋ったし、エドガーも驚いた。意外なことに、この計画に一番乗り気だったのはカールトン教授だったのである。
 エドガーのことを多少は信用する気になったということもあるのだろうが、一番の理由は娘のことを思ってのことだろう。
 ただでさえひとりで何とかしてしまおうとするところのあるリディアだ。改修工事中の家にひとりにしておいたら、多少じゃない不便まで我慢して過ごしかねない。
 その点、エドガーに預けておけば日々の生活に困ることはないということだ。
 まあ、かといって、カールトン教授にしたって、全面的にこの提案に賛成だったというわけではないだろうけれど。
 カタンと最後のエンターキーを押して、ほっと息をついた。うんと伸びをして、凝った筋肉を解しながら寝室へと向かう。
 リディアとやらしいことがしたいなあと、眠い頭で身も蓋もないことを思いながらも、きっともう眠ってしまっているだろうリディアを気遣って、音を立てないように扉を開けた。
 てっきり部屋の中は暗くなっているんだろうと思っていたのに、明かりはついたままになっていた。
 それを見てエドガーは、お休みを言う前にかわした会話を思い出し、まさかまだ起きてるんじゃ、と少し慌ててしまった。
 仕事をするよりもリディアに構うことを優先したためにこんな深夜までパソコンと向き合うはめになったのだが、それはエドガーの自業自得というものだ。なのにリディアは妙な責任を感じてしまったらしく、エドガーの仕事が終わるまで待っていると言い出した。
 その申し出はとても嬉しかったけれど、受けるわけにはいかなかったから、エドガーはにっこり笑って
 ―――僕が行くまでに寝てなかったら、遠慮なく襲うよ?
 と言ったら、台詞を遮る勢いで「お休みなさい!」と言われた。予想通りの反応だけれど、贅沢なことに少し寂しくも思ってしまった。
 肌を重ねるのは何も初めてのことではないのに、リディアは本当に、いつになっても初々しい。
 そろり、と、彼女の顔が見える一まで回り込むと、目蓋は下ろされ、健やかな寝息が聞こえてきてほっとした。
 眠っているのにどうして電気がついているのか、理由を考えれば明白で、リディアがエドガーのためにつけっぱなしにしておいてくれたんだと思えば、自然に頬が緩んだ。
 ほんの少しだけ光量が落とされた電気に照らされて、キングサイズのベッドにリディアが横たわっている。寝転がれるスペースはいっぱいあるのに、律儀にも半分から向こう側にははみ出さないように、身体を丸めて眠っているのがリディアらしい。
 可愛らしい寝顔を眺めながら寝間着に着替え、スプリングがよくきいたベッドにゆっくりと体重をかける。
 柔らかな丸みを帯びた頬にかかったキャラメル色の髪を払うと、くすぐったいのか、リディアは小さな吐息を漏らす。あどけない寝顔に微笑ましさを感じると同時に、しどけない寝姿を見て身体の中心が疼いてくる。
まさか寝込みを襲うわけにはいかないと苦笑して、そっとリディアの横に潜り込んだ。
 ベッドの端の方を向いて眠るリディアはエドガーに背を向けている。その小さな背中を自分の身体で包み込むようにして、エドガーは当たり前のようにリディアの身体に腕を回す。
 女性の身体は柔らかい。リディアの場合はまだまだ発達途中だから、これからもっと柔らかく、心地よい感触になっていくんだろうと思うと、胸が踊る心地がする。
 とても眠かったけれど、抱きしめたリディアが、エドガーの腕の中で居心地のいい場所を探すようにして身動ぐのを感じて、ついつい彼女に構いたい欲求が湧いてきてしまった。
 といっても、無理矢理起こしてどうこうするつもりはないし、寝込みを襲って一方的に欲望を吐き出すつもりももちろんない。
 ただエドガーはリディアの感触をもっとよく確かめようと、そろそろと細い身体の線に沿わせて手のひらを動かし始めた。縦に一列に並んでいるボタンの感触を感じながら、上へと上っていくと、弾力のある柔らかな膨らみに手が届く。
 手のひらで包み込んでしまえるそれをやんわりと撫で、微かに感じる抵抗力を楽しみながら、気持ちいいなあと暢気なことを考える。
 するりと指を膨らみの間から鎖骨へと這わせるように動かして、おや、と思う。しばし考えた後で、まあ今更だよねと開き直り、胸元のボタンを二つ外して、そこから直にリディアに触れた。
 そこでエドガーは、嬉しいような悲しいような、なんとも言えない複雑な気分になってしまった。
「………なんで下着を着けないのかな」
 眠ってしまえば決して襲われることはないとでも思っているのだろうか。いや、リディアのことだから、そう思っている可能性はとても高いのだけれど。
 これ以上触れていたら我慢ができなくなることはわかりきっていたので、そっと手を離して、また緩く彼女の身体に巻き付けた。
 うずき出した身体をしいて意識しないようにして、目蓋を下ろし、じわじわと広がっていく眠気の方に意識を集中させることにする。
 視界を闇が覆ったことで、リディアから香るカモミールが強く感じる。それにささやきかけるように、エドガーはリディア、と唇だけで名前を呼んだ。

 ―――今夜これだけ我慢したのだから、明日の朝は、覚悟しておくんだよ?


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ひっさびさに更新しましたこんにちは!
いろいろと書きかけては消して書きかけては消して…というのを繰り返していたのですが、やっと一つ形にすることができましたよー(ふはー
教師と生徒っぽさがあまり出ていない話ですが、それはそれ、何かセクハラしちゃってる相変わらずなエドガーをお楽しみ頂ければ幸いです…!(いいのかそれで
夏休み企画パロ小説
教師エドガー&生徒リディア

「―――リディア・カールトン!」
聞き慣れた、魅惑的な甘い声。しかしいつもとは違って固くとがった声音に、リディアははっと身体を起こした。
周りを見ると、さして広くない教室のあちこちから意識を向けられているのを感じる。またか、という溜息やら苦笑はまだ良いとして、あからさまにくすくすと笑う声にリディアは固い椅子の上で顔を赤くして縮こまった。
しかし教壇の上から見下ろす美貌の教師はその生徒たちに、リディアに向けるものとは明らかに質の異なる冷たい一瞥をくれて黙らせ、またリディアを軽く睨んだ。そろりと顔を上げると、口許は引き締まったまま、灰紫の瞳が柔らかくなる。これはきっとリディアにしか判らない変化だ。
「僕の授業の大半を睡眠学習で受けるとはいい度胸をしているね、ミス・カールトン」
「………すみませんでした」
嫌みな口調も彼が言うとどこか明るく、爽やかになってしまう。聞いている分には教師が生徒に親しげに話しかけている印象しか受けないため、彼が実は粘着質な怒りを持続させるタイプだと言うことはほとんど誰も知らない。
「別に謝ることはないよ。簡単すぎてつまらなかったってことだろ?」
「……いえ、あの」
にっこりと笑う化学教師は、非常に楽しそうだ。あたしが理科系全般苦手だってこと知ってる癖に、と内心で毒づきながらも、居眠りしていた身分ではにらみ返すことすら出来ない。
「しかしそうなると僕は授業内容を組み直さなくてはいけないな。どの程度の内容を、どの程度のペースで進めていけばいいのか、生徒に問題を解かせて調査が出来たら一番ありがたいんだけど」
「………」
「授業が終わったら、僕のところに来てくれるね?」
輝き出しそうな笑顔で見つめられて、リディアは溜息をついた。計ったように一日の終了を告げる鐘が鳴る。
「…はい、ミスタ・アシェンバート」


頭が回らない午前中や、昼食後の一番眠くなる時間帯の授業も眠らず持ちこたえたというのに、最後の最後で居眠りをしてしまった。エドガーの授業だから、と油断したのがまずかった。本当はエドガーの授業こそ身を引き締めて受けるべきだったのに。
理科系科目の中でも一番苦手な化学の授業だというのも悪かった。意味が解らない言葉の羅列を、あの心地よい声で朗々と説明され続ければ、これはもう眠るしかないではないか。
最初はそっと目を閉じてゆらゆらと船を漕いでいただけだったのに、いつの間にか机に突っ伏していたらしい。恥ずかしいやら情けないやらでまた溜息をつき、のろのろと鞄に荷物を詰める。エドガーが入り口で待っているのが見えるが、あんな風に言わなくても良いじゃない、と、リディアは少し拗ねていたので、意地でも急いでやるものかとゆっくり忘れ物がないか確認した。
と、後ろの席の男子生徒と目が合う。ぱっと目が逸らされるのはいつものことなので特に気に留めず、リディアもそのまま知らない振りをしようとしたが、彼は珍しく口を開いた。
「またあの教師の授業で居眠りか。お前、学習するってこと知らないのか?」
「うるさいわね。居眠りしたくてしてるんじゃないわよ」
む、として睨むと、彼もちらりと目を合わせてきた。アンディはリディアの幼なじみと言っても良いだろうと思う。そのくらい昔からお互いのことを知っている。けれどだからといって、特別親しいとかお互いに好意を持っているなんてことはない。
まだ何か文句があるのかと見ていると、視線を投げるように逸らされた。捻くれた口調といい行動といい、アンディはまったくわからない。今、彼が呆れているのか馬鹿にしているのかさえ、明瞭じゃない。
もっとも、リディアが人間を相手に不可解な思いを抱かないことの方が少ないのだが。
ミス・カールトン、と柔らかく促される声を聞いて、慌ててエドガーの方を向く。彼は入り口からちらりとアンディを見て、リディアを見た。瞳だけで笑いかけられ、リディアは恥ずかしくなってぱっと目を逸らす。アンディが気になる目でその表情を見ているとは知らず、結局は急いで準備し、エドガーの元へ向かうのだった。


リディアが通うパブリックスクールは上流階級と裕福な中流階級、それから階級に関係なく成績が優秀な生徒が通っている。
教師にも上流階級のものが多かったが、伯爵の地位を持ちながらエドガーほどの若さで教職に就いている貴族は稀だった。彼は美貌も才能も財産もあり、望めばもっと別な職に就くことも、職に就かずに暮らせることもできるのに、とエドガーを変わり者扱いするものも多い。
エドガーは確かに変わり者だとリディアも思う。けれど別に信心深くもなく、教育熱心であるわけでもないエドガーがしぶとく教師の地位に居座っている理由の一端がリディアにあることを、彼女は知っていた。
怒られてとぼとぼと歩く女子生徒をひとり連れて、悠々と廊下を歩くエドガーの教師としての顔は、彼に個別に与えられた仕事部屋に入った途端、柔らかく崩れ去った。
覗き窓に覆いのカーテンを引いた扉を閉め、鍵を掛ける音が響くと、リディアはぱっとエドガーを振り返った。満足げに、愛おしそうにリディアを見つめて笑う顔はもう婚約者のもので、リディアは顔を赤くする。
「………鍵とかカーテンとか、必要ないじゃない」
「見られて困るのはリディアだろ?」
「教師に生徒がお説教する姿なんて、隠す必要ないでしょ?」
頬を染めたまま、じっと警戒するように見つめてくるリディアにエドガーは意味ありげに微笑んで、ソファに彼女を座らせた。コーヒーを二人分淹れて、拳が一つはいるほどの空間を空けて隣に座る。
「さて、昨夜は遅くまで何をしてたんだい? 僕とはディナーすら過ごしてくれなかったのに」
「エ…ミスタ、授業の準備をするのに毎日大変だって、前に言ってたじゃない。平日にディナーをのんびり食べる暇なんてないでしょ?」
「君と過ごすためだったらどうにでもするさ。まあいいよ、今日は一緒に過ごせそうだし…で、昨夜は何を?」
教師としての言葉なのか、恋人としての言葉なのかがよく解らない。灰紫は楽しげに煌めいて、でも少し怒っているようにも見える。
リディアはさりげなくエドガーから視線を逸らし、クリームと砂糖がたっぷり入ったコーヒーのカップを見た。
「……メールの返事を書いてたの」
「相手はどこの不届きもの?」
穏やかな声なのに、怖い。リディアはぎょっとした。
「いつものメールよ、妖精博士の……ミスタ、わかってるんでしょ?」
「現実でもネットでも、君におかしな輩が目を付けないかと不安で溜まらないよ。頼むから、本当に妖精の仕業だと解るもの以外は返事をしないでくれ」
リディアが妖精博士の仕事を、インターネットを通じて行っていることはエドガーも承知のことだ。お人好しの彼女は届いたメールがはっきりと悪戯だとわかるまでは律儀にも返事を書いていたので、一度ストーカー騒ぎに発展しそうになったことがある。
エドガーがリディアの行動を否定したことはないが、それ以降あまりいい顔をしなくなった。エドガーを煩わせたくないと思うリディアが、悪戯メールにもできる限り自分で何とかしようとするのも気にくわないらしい。
「大丈夫よ、あたしだってだいぶ見分けるのに慣れたもの。…あの、まだあなたには、頼らなくちゃいけないことも多いだろうけど…」
恥じるように視線を落とすリディアにエドガーは笑んで、空になったカップを置いた。長い指先でそっとリディアの髪に触れる。
「僕としては頼ってくれないことの方が問題かな。君のことは何でも知りたいと思ってるんだから」
「…例えば、化学の実力とか?」
身体を引いて、たしなめるようにエドガーを見る。
学校で、恋人同士のような振る舞いをしてはいけないとリディアは思う。あくまでここでは教師と生徒なのだ。けじめはしっかり付けなくては。
本来は教師が気をつけるべき筈のことだと思うのに、エドガーはそう言うところにいまいち無頓着で困る。今も反省した様子はなく、残念そうに肩をすくめただけだ。
「テストはうそだよ。君の実力なら嫌と言うほど知ってるからね……はい、このプリント、来週までにやっておいで」
テストも嫌だが、プリントも嫌だ。ただでさえ苦手で、問題を解くのに時間がかかるのに、追加課題なんて出たら…と、憂鬱な気分でプリントを受け取り、リディアは首を傾げた。
「これ、いつものやつじゃない」
「うん。今日の授業の範囲は一緒にやろうか。説明も聞かずに、自力じゃ出来ないだろうから」
からかうように言われて思わず首をすくめるが、これでは罰にならないじゃないのと思う。
化学だけでなく、物理や生物、数学が破滅的に苦手なリディアのために、エドガーはよく授業や教科書よりよほどわかりやすいプリントを作ってくれる。エドガーがリディアの専属チューターのように教えてくれるから、何とか常に上位の成績をキープできているのだ。
これで良いの? と視線で問いかけるリディアにエドガーは笑って、懲りずに手を伸ばしてリディアの頭を撫でる。リディアも今度は避けなかった。
「良いんだよ。呼び出したのは一緒に帰りたかっただけだからね。それとも、お仕置きして欲しかった?」
「結構よ!」
間髪入れずに答えると、楽しそうな笑い声が返ってきた。エドガーはいつもにこやかだけれど、こんなにも素の表情で笑うエドガーを見られるのは、この学校ではリディアくらいなものだろうと思う。
ちょっとだけ、じんと来て、リディアはプリントを胸に抱きしめるように持った。
「ありがとう、ミスタ」
「リディア、名前で呼んでくれ」
「…先生を名前で呼ぶなんておかしいわ」
「今は二人きりだよ」
「ここは学校だもの」
きゅ、と胸にプリントを抱いたまま頑なに俯くリディアの肩をそっと抱き、それでも彼女がじっとしていると、エドガーは軽く溜息をついた。
「じゃ、教師と生徒らしく、勉強でもしようかミス・カールトン。前に出したプリントはできたかい?」
身体を離して優雅に足を組むエドガーは壇上にいる時の顔と同じで、切り替えの速さにいつものことながらリディアは戸惑う。しかもまだ半分しか埋めていないプリントのことを持ち出されて更に動揺してしまった。
「………あの、勉強はまた今度にしませんか?」
思わず敬語になっておずおずと見上げると、エドガーは笑みを浮かべたまま片方の眉を上げた。
「化学が嫌なら別のでも良いよ。生物、物理、数学………何なら歴史学や語学でも。それも嫌なら、そうだな」
もう今日は勉強したくない。そんなことを考えて返事をしあぐねていると、エドガーの声に艶が混じった。何かやばい、と思った時にはもう遅く、腰に腕が回ってぐっと引き寄せられる。

「――恋人同士の振る舞い方とか?」

反論する間もなく、額に唇が降ってきた。慌てて引き離そうとするが、その手も取られて口づけされる。
「知識を持つのも大事だけど、実地で経験するのが一番だと思うんだよね。僕以外が君の相手になるなんて考えられないし、君の身体に慣れた僕が教えるのが一番だと思うんだ」
何だか際どいことを満面の笑みで言われている気がする。どんどん密着して、扇情的な瞳の位置が近くなったエドガーを前に、リディアは慌てた。
「せ、先生が生徒に教えることじゃないでしょ!?」
また頬にキスが落ちる。ちゅ、と吸い付く音がやけに耳に響いた。
「僕が君に教えることではあると思うよ。それにねリディア、僕の好みを知っておくと後々とても役に立つと思うんだ」
「どう、役に立つって言うのよ…!」
腰に回していない方のエドガーの手が、リディアの小さな膝に置かれた。手のひらですっぽりと包み込み、円を描くように撫でる。そこから上へも下へも行かない、それだけの愛撫。けれどエドガーにさえ滅多に触れられることのないリディアは、それだけで固まってしまった。
「僕はきっと、わがままも、おねだりも、君の願うことなら何でも叶えてあげるようになるだろうね」
間近で見る瞳が何だか寂しそうに見えて、リディアは抵抗する力を緩めた。
エドガーがリディアに甘えて欲しがっていることは知っている。たまに甘えると、ものすごく喜んでくれることも。
けれどそれが素直に出来ないのがリディアなのだ。それに彼女は、今でも十分すぎるくらい、彼に頼って甘えていると思っている。
「…今だって、あたしがお願いすることは、ほとんど全部きいてくれてるじゃない」
膝に置かれた手が気になって、うまく声が出ない。腰に回された手は相変わらず優しくリディアを拘束している。視線を滑らせて、いつの間にか床に落ちていたプリントを見た。
「プリントだって…他の仕事もあるのに、丁寧に作ってくれて。先生は、あたしに甘すぎるのよ」
小さくむくれるリディアを、エドガーは笑って緩く抱きしめた。額がくっつきそうな位置で微笑んでくる。もう完全に恋人同士の距離だ。
「いっぱい君を叱っている気がするけどね」
「目が笑ってるもの、怖くなんてないわ。それに、それもやっぱり、あたしのためなんでしょ?」
本当はエドガーも、自分とリディアの立場はしっかりと認識している。二人が恋人同士で、婚約までしていると言うことは、学校内では校長以外に知るものはいない。
それに加えて、エドガーは女子生徒から大人気なのだ。もしエドガーが心のままにリディアを特別扱いしたら、教師から見えない場所でリディアが何をされるかわかったものではない。リディアが気付かないところで、エドガーが色々と配慮をしてくれていると言うことは、彼女にもわかっていた。
「確かに僕は君に甘いけど、君だって僕にはだいぶ甘いんだから、お互い様なんじゃないかな」
言いながらエドガーが腰を浮かして、身を乗りだしてきた。あれ、と思う間にソファの肘掛けと背もたれに挟まれて、リディアは動けなくなる。
「せ、先生?」
「何? リディア」
「え、あの」
「お喋りは終わり。勉強の時間だよ。キスはだいぶうまくなったけど…試しに、復習から始めようか」
何が勉強で、何が復習なのか。リディアは妖しく自分を捉える灰紫に見つめられながらくらくらした。
けれどエドガーは、もう一息身を乗りだせば唇を重ねられる距離にいながら動かない。リディアの柔らかな頬の輪郭を指で撫でながら、じっと彼女から許しが出るのを待っている。
身動きできないリディアは、視線すら外せずに小さく喘いだ。見つめられただけで、空気を伝わった体温を感じただけで鼓動が速くなり、呼吸が浅くなる。
緩く弧を描いたエドガーの薄い唇を見ればもう限界だった。結局こうなるの、と内心で溜息をついて、そっと瞼をおろす。エドガーがやんわりと髪を撫で、優しく唇を重ねてきた。

復習から、とリディアに言った通り、エドガーは始めから濃厚に口づけることはしなかった。
唇をすりあわせ、押し合い、柔らかさを確かめる。湿った呼気で互いの唇を濡らしながら、露がしたたりそうなそこをそっと唇で舐め取る。
奥手なリディアもエドガーとのキスにはだいぶ慣れてきて、舌が当たる感触を感じたら唇をそっと綻ばせる。あちこちを舌で探りながら少しずつ中へ入っていくと、リディアが小さく声を漏らして、エドガーの首に細い腕を回す。
露出した二の腕が頬にあたり、吸い付くような感触をエドガーに与える。唇をいったん離して、張りのある柔らかなそこに濡れた唇を滑らせた。
真っ白なそこに、所有の印を付けることが出来たらどれほどの快感だろう。けれどそれを実行する前に、リディアがほんの少し震えて身を捩る。
「エ、エドガー…」
やっと名前で呼んでくれた恋人の潤んだ瞳に艶っぽく笑いかけ、また唇を寄せる。滅多に触れないところにたまに触れると、リディアはそれだけで心細そうな声を出す。それがまたそそられるのだけれど、ここで押し倒すわけにはいかないだろう。
高まる欲望を逃がすように、リディアに深く唇を重ねた。リディアの身体から力が抜けてくる。引き寄せて、エドガーの身体にしなだれかかってきたところを更に舌で責め立てて、きつく抱きしめた。
と、戸口の方で微かに音が響いた。キスを続けながら横目で見ると、カーテンの端に中を伺っているような黒い影が見えた。少し様子を伺っているとカーテンの隙間からちらりと姿が見え、エドガーは不機嫌に眉を寄せる。
いつもリディアの後ろに座っている男子生徒だ。授業中もよくリディアを見ている。名前は何だっけ。確かイニシャルはAだったような。
覗き窓とカーテンの僅かな隙間からでは、キスをしているところは見えないだろう。何をしているかは、想像力を働かせればすぐに判ることかも知れないが。
エドガーは少し考えて、床にひざまずき、全体重を預けてくるリディアを両腕で抱えて立ち上がった。急に身体が浮き上がったリディアは驚いたように身体を強張らせたが、そのままエドガーが肘掛けに腰掛けて膝の上で抱え直す頃には、また彼の温もりにとろけだした。
片手でリディアの表情を戸口の方からは見えないように隠しながら、後頭部を引き寄せる。身体も頭も引き寄せられて身動きが出来ないリディアは、深く差し入れられた舌に苦しそうな、艶のある声を漏らす。
首筋まで真っ赤にさせてキスに夢中になるリディアの顔はぞくぞくするほど扇情的だ。廊下から覗いてる奴には、彼女が自分からエドガーの首に腕を絡め、普段からは想像できないくらい艶めかしく寄りかかり、キスに没頭している様子が見えればいい。
この可愛らしい顔も、声も、ひとかけらだって分けてやるものか。
舌を器用に動かして、小さなリディアのそれを掴まえた。絡めて、吸って、味わう。ちょうだい、と唇を深くあわせながら首を傾けてねだると、リディアはそろそろ舌を動かし始める。エドガーの中までやってきたそれを軽く噛んで、丹念に舐めた。唇で挟み、強く吸う。
「………んぅ、ん……ふ」
リディアの手が、とん、とエドガーの背中を叩いた。目を開けると、きゅっと目をつぶったリディアの目の端に涙が浮いている。
強く求めすぎたかな、と思い、名残惜しいながらも唇を離した。きらきらと光る糸が二人を繋ぐ。
不愉快な男子生徒はまだいるのかと視線を動かすと、身を隠すことも忘れたように呆然とこちらを見ている姿が目に入った。目が合うと、余計に身動きが出来なくなったように顔を強張らせる。エドガーは冷たくそれを見つめながら、繋がった糸をリディアの唇ごとゆっくりと舐め取った。一瞬目を伏せて、相手に逃げる機会をやる。次に視線を戻した時には姿はもう無く、ぱたぱたと走る音が遠ざかっていった。
「………エドガー…?」
浅い呼吸を繰り返しながらとろんとした瞳で見つめてくるリディアに笑んで、ちゅっと軽く口づける。
「リディア、可愛い」
「……何、言ってるの」
恥ずかしそうに顔を伏せるリディアを胸に抱き寄せた。全身を預けてくるリディアは、本当に可愛くて、愛おしくて、だからこそエドガーはそっと溜息をついた。
「まったく…君はよく虫をくっつけてくるよね」
え、と驚いた声を出してリディアが慌てたようにぱっと顔を上げる。
「やだ、虫がついてたの?」
手でぱたぱたと髪や服を払いながら、どこ? とれた? と聞いてくるから、エドガーは思わず吹き出した。
「エドガー?」
不思議そうな顔をする愛しい婚約者に向かって、エドガーは満面の笑みで応じる。
「大丈夫だよリディア、僕がきちんと追い払ったから」
本当は消えて欲しいんだけどね、という物騒な言葉にも、リディアは首を傾げるだけだった。

+++

夏休み企画第一弾は教師エドガーと生徒リディアになりました!
やっぱり思いついたやつから書いていくのが良いかなあと思いまして…一番ちょうど良い長さでしたし。
単発ものなのであまり細かい設定は作ってないです。そして色々と間違った記述もあるかと思いますが、そこらへんは軽くスルーでお願いします…!
時代は現代、すでに二人は婚約者同士にしてみました。色々と書きやすいので(笑)
これから企画ものも少しずつ挙げていくつもりです。お付き合いよろしくお願い致します(><)
何か気に入ったものがあればコメントなども頂けると嬉しいです、よ…!!(強請るな)
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