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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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夏か冬に向けて教師と生徒パロをきちんと書ききろうと思いまして、ぽつぽつ小出しにしていきたいと思います^^
ブログでは同じ設定の単発物がぽんぽん載るなあくらいの感じになるかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです><

最終的には本にしたい……です。どうなるかな。



+++


 スコットランドから北西の方角、大西洋上にあるヘブリディーズ諸島で小さな遺跡が発見された。無人島も多いこの地域には未開の場所も多く、今度の発見も新聞の隅に小さく載るだけのささやかな発見でしかなかったはずだった。
 しかしこれは大部分の人間には価値のない記事だったが、一部の人間にとってはひどく関心を引く事柄でもあった。
 ヘブリディーズで見つかったものは、棺だ。祭壇もなにもない、ただ木々に守られるようにしてぽつんと置かれていた棺は、とても精緻な作りをしていた。軟らかな土と苔、それからうっそうと生い茂る森に守られた棺は、雨風による風化の影響をほとんど受けておらず、美しい様子を保っているという。
 見つけたロンドンの考古学チームは、すぐさまこれを引き取りたいと申し出た。
 棺といえば墓。墓には古代の遺産がつきものだ。棺を調べることで新たな発見に繋げることができるのであれば、国にとっても有益なことであろうと。
 しかし生憎なことに、その土地は随分古くから続く名家の私有地であった。彼らは何度も交渉の機会を持とうとする考古学者たちの要求を頑なに突っぱね、あしらった。
 それでも引き下がろうとしない学者たちに、マッキール家の長はほとほととため息をついた。
「申し訳ないがの、あんたらは勘違いをしておる。あれに調べるほどの価値などない。貴人を収めるための墓もありゃせんよ」
「それは調べてみないとわからないことです。長、あなたの本音はよそ者に土地を踏み荒らされたくないということではありませんか? われわれが足を踏み入れるのがお嫌であるのならば、島のものを貸していただいてもかまいません。もちろん、賃金はお支払いします」
「しつこいの。だいたいあんたらは、最初の時点からして間違っとる。いくら粘っても、わしに許可は出せんよ」
「……マッキール家の私有地だと、聞いていますが?」
「あれはマッキール家のものではない。マッキール家の娘のものだ。娘の許可なしに判断はできん。わかったなら帰ってくれ」
 追い返された考古学者は、今度はその娘のことについて情報を集めようとしたが、結果は芳しいものではなかった。簡単に諦めるには惜しい魅力があの棺にある。それはチームの多くが感じていることで、みながみな未練に縋って島を走り回ることが何日も続いた。
 手に入ったのは、娘がもうヘブリディーズから去ってしまったという情報だけ。多くのものが諦めかけたとき、チームのひとりがふとこんなことを思い出した。
 ロンドンで教鞭を執る著名な教授に、スコットランド出身のものがいる。彼の奥方はスコットランドよりさらに北、ずいぶんな田舎からやってきた美しい人だったということを。


 *


「……見つけた」
 図書館で一心不乱に新聞を読みあさっていたリディアは、目当ての記事を見つけて眉をしかめた。
 ここ最近、リディアの周りを騒がしている原因がこれだ。彼女は紙面の隅っこに小さく掲載された記事を忌々しく睨みつける。ヘブリディーズ諸島で発見された遺跡。この記事のおかげで思いがけず母親のルーツを知れたのは嬉しかったけれど、だからと言ってこれがリディアになんの関係があるのかと思う。
 父親を訪ねてきた考古学者は、初めはまともな人に見えた。リディアがなにかおかしいと気づいたのは、亡くなった母親のことをやたらと気にかけ、言葉巧みにアウローラの出自を聞き出そうとしていたからだ。
フレデリックも不思議そうにはしていたけれど、もともと人がいい父親は首を傾げながらもアウローラのことをその考古学者に話してしまった。
そうしてアウローラがヘブリディーズ諸島の出身だとわかると、目の色を変えて遺跡の譲渡を迫ってきたのだ。
 母親が、彼の言う「マッキール家の娘」だという確証がないにもかかわらず、だ。
 その時点でリディアにはついていけない話なのに、遺跡の譲渡が無理なのであれば、リディアと婚姻関係を結びたいとまで言ってきた。さすがに相手は父親よりも年上の考古学者ではなく、彼が世話をしている研究員らしいけれど、それにしたって正気を疑う申し出だ。
「もう、冗談じゃないわよ」
 リディアがしなくてはいけないことは、母親と遺跡が関係ないこと、そうでなければリディアと遺跡が関係ないことを早急に彼らに示すことだ。できればフレデリックがリディアに彼らを直接会わせないようにしている間になんとかしたい。
ぶちぶちと呟きながら、リディアは見つけた記事をコピーしようと立ち上がった。
さっさと終わらせて帰ろうと思っていたのに、身を翻した途端になにかにぶつかり、額をしたたかにぶつけた。
「失礼、大丈夫?」
「こ、こちらこそ」
 柔らかなテノールの声に、ぶつかった相手が若い男性だとわかる。
 ちらりと姿を確認すると、高級そうなスーツが目に入った。汚してないわよね、と内心冷や汗をかきながら、目を合わせないように頭を下げて通り過ぎようとしたのに、やんわりと大きな手のひらに押しとどめられる。
 この人、手袋までしてる。
 よく高級レストランの支配人なんかがしている、薄手の白手袋だ。どこもかしこも高級そうな人が、一介の高校生になんの用かしらと身構えてしまう。
「あの、なにか……」
「髪が絡んでしまっているよ。ちょっと待って」
 え、と視線を上げたところで、不意に男性と視線があった。
 珍しい瞳の色だ。綺麗で、けれどうまく感情が読めない灰紫。
 けれど瞳に意識が向いたのは一瞬で、リディアは男性のあまりにも整った容貌に思わず惚けてしまった。金糸の髪、白磁の肌、整った鼻梁、長い睫毛。映画の中から出てきたみたい。もしかして、俳優さんかモデルさんだろうか。
「柔らかい髪だね」
「え……」
「綺麗な色だし、直に触ったら手触りがよさそうだ。手袋なんてしてくるんじゃなかったな」
 距離が近い。
 図書館だから声をひそめているのだと思うのに、囁き声がやけに艶めかしくてリディアは動揺する。
 勝手に熱くなる頬をどうにもできずに俯くリディアに、男性がくすりと笑った。
 ……なんで、笑われたのかしら。
「きみは、コレジエイト校の生徒?」
 なぜかいっそう距離を詰めて囁いてくる男性に、リディアは思わず身を仰け反らせる。
 男性の肩越しに見知った顔を見つけて、リディアは顔を強張らせた。
 考古学チームのひとりだ。よくリディアの家に来る中のひとり。確か、ベンソンといっただろうか。まさか、こんなところまでリディアを探しに来たのだろうか。
「どうしたの?」
 いきなり様子が変わった彼女に、男性が目を瞬かせている。リディアは答えようとしたけれど、ベンソンと目が合いそうになるやいなや反射的に男性の懐に入るように身を隠した。すると、なぜか当たり前のように背中に手を回される。
「隠れてるの?」
 男性の手の位置に異議を唱えたいのはやまやまだったが、抗議することもできず、ただ頷く。髪が軽く引っ張られて、とれた、という呟きが聞こえると、リディアは身体を反転させられた。
 彼女を庇うように肩に回された手に、それが見知らぬ男の人のものだというのに、なぜだかひどく安堵する。
「あ、新聞……」
「破って持ってく?」
「そ、そんなことできるわけないでしょっ」
 ついつい声が高くなってしまった。
 あ、と思ってベンソンの方を伺うと、彼はしっかりこちらを見つめていた。
 早足でやってこようとする彼に、身が竦む。最近の彼らは目つきが怖い。なんだかとても殺気立っている。
 ぐい、と肩を引き寄せられて、半ば引きずられるようにして図書館の入り口へ向かう。
 走れる? と囁かれた声にしっかり頷くと、彼はリディアの肩から腕を外して、代わりに手を取った。
 一気に加速したふたりに、咎めるような利用者の目線が痛い。ごめんなさい、と心の中で謝りながら、まっすぐに出口を抜け、駐車場へと向かう。
 そのままの勢いで黒塗りの立派な車に乗り込む直前に、ベンソンが彼女の名前を叫ぶ声が聞こえた気がした。
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好みでしたvv
「教師と生徒」結構好きでした。全部で5話だったでしょうか?ラブ度の高さにドキドキしながら、強引でいつも余裕があるのに、肝心な所はちゃんとリディアを尊重するエドガーの溺愛っぷりが最高でした。リディアもちょっといまどき女子高生なのが新鮮です。

本になるかも?!嬉しい。短編でも一つの完成された世界観に浸りたいです。

以前の作品も販売予定…そちらも楽しみ(^ヮ^)/

追伸:なんて可愛い背景でしょうか…猫好きにはちょっと太った感の姿と素朴さが堪りません。
もじゃねこ 2010/05/31(Mon)21:46:51 編集
ありがとうございますー^^
「教師と生徒」は単発でしか書いたことないのですが、なんか位置的に裏要員の組み合わせだった気がします(笑
原作の伯妖はリディアの倫理観のおかげで節度が守られている(?)感じなので、リディアの感覚が現代になったらもう、エドガー的にはうはうはな展開になるだろうなあと予想します(笑
ブログの背景、可愛いですよね! いつか使おう使おうと思ってキープしておいたものですv ふとっちょにゃんこに癒されます(´ワ`*)
コメントをありがとうございましたv
【2010/06/07 17:02】
楽しみ~
こんにちわ。久しぶりに寄らせてもらいましたら、可愛い背景になっていたうえ、UPされていてとてもうれしかったです。
「生徒と教師」ものは、前々から本にならないかな~?と期待していたので、ぜひ頑張ってください!!
rei 2010/06/02(Wed)20:07:10 編集
どうもですーv
こんにちは、更新停滞っぷりに関わらず覗きに来てくださってありがとうございます><
教師と生徒、やっと形になりそうな感じに設定ができてきたので、頑張って最後まで書いていきたいと思います(*´ワ`*)
背景可愛いですよね! コメントをありがとうございましたv
【2010/06/07 17:04】
更新どもですw
さっそく読ませて頂きました(*^Д^)w
やっぱり教師設定はいいですよねwエドガー紳士~とかかんちがいしちゃいそうになってしましますよ(笑)まぁ、相変わらずリディアはかわいいですけどw
背景の猫がかわいいですね~wおっと猫じゃなかったかな?(笑)
桜華桃蘭 2010/06/09(Wed)23:32:09 編集
ありがとうですー^^
教師設定はよいですなー(*´ワ`*)この暗黙にある上下関係!←
エドガーは紳士、です、よ……!(嘘っぽい 私的に教師と生徒の組み合わせはぴんく要員なので、早くはっちゃけてほしいものです。
背景のにゃんこ、可愛かったですよねえ>< ちょっと長い文章を読むとなると途中見づらい部分が出るので変えてしまいましたが、またどこかで使いたいです(ぐっ
コメントをありがとうございましたv
【2010/06/20 12:09】
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