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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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伯妖の教師と生徒パロです。両思い前。
パロではけっこう聞き分けの良い優しいエドガーばかりを書いてきた気がするのですが、このパロではSな感じを前面にね、出せたら嬉しいなってね!
とはいえ、本気で惚れた途端にへたれになるエドガーなので、わかりやすくSっぽいのは初期の僅かだけなんだろうなあとか。
今後、本編が書けるかどうか微妙なので、小出しに小出しにしていきます^q^


+++



 人間のことはよくわからない、と、ため息をついていた姿を覚えている。
 まるで自分が人間以外のものであるかのような言いぐさを滑稽に思ったけれど、それが彼女にとって掛け値なしに本気の言葉だったということに後ほど気づき、思わず呆れてしまった。
 心の機微に疎いわけではない。人との距離を測れないわけではない。
 ただ、私欲に絡むことにはとことん鈍い。
 世界が善意だけで象られていると思っているわけではないだろうに、お人好しが過ぎる彼女は、弱った顔で近づいてくる人間の下卑た思惑を読むことができない。
 厚意を察知することができても、特別な好意にはとことん鈍い。
 自分が望まれるわけがないと、ああまで頑なに信じ込めるというのは、いったいどういうことなんだろうと、名ばかりの婚約者であるエドガーは首を傾げてしまう。
 教壇に立って、リディアのいるクラスをただ眺めているだけでも、彼女が男子生徒の興味を惹いていることがよくわかる。
 子供じみた好奇心が大概で、リディア自身の警戒心の強さもあって、実際に近づいていく輩は皆無だった。
 そうであればこそ、幼いことだな、と、数歳しか年の離れていない自分の生徒たちを苦笑混じりに眺めていられる余裕があったのだけれど。
「今日のあれは、どういうこと?」
 下校し、私服になったエドガーは、『婚約者』の顔でリディアを問い詰める。
 書斎の扉に背中をつけて、目の前のエドガーをじっと睨むリディアは、彼の束縛的な言動を不快に思ったらしい。
「なんの話よ。ていうか、どいてちょうだい」
「ニンジン頭のことだよ。僕のことはさんざん不誠実だと罵るくせに、きみもとんだ浮気者だね」
 人気のない廊下でファーガスに抱き込まれていたリディアの姿を思い出し、エドガーは不愉快を隠そうともせずに眉をひそめる。
 数秒間その体勢でいた後、リディアが男の腕を振り切って逃げ出すまでをつぶさに見ていたエドガーは、見開いた瞳に動揺の色を隠しもしない少女に向かってため息をつく。
「告白でもされた?」
「……あなたには、関係ないわ」
「あるよ。僕はきみの『婚約者』だ」
「肩書きだけじゃない」
「ぼくはちゃんと、きみが好きだ」
「あなたの言うことなんて信じられない」
 頑なに俯いて、こちらを見ようともしないリディアに腹が立つ。
 警戒心が強いくせに、肝心なところは無防備で。
 そうやって、男が目を離せなくなるような隙を見せつけるくせに、エドガーに対してはどこまでも意固地で、かわいげがない。
 決して声を荒げることはしないけれど、彼が不機嫌なことは正しくリディアに伝わっているようだ。
 エドガーが他人に対して、こんなに感情的になるのは珍しい。それがどういうことかわかっていない彼女に、彼はさらに苛立ちを募らせる。
 つむじを見下ろし、その先にある華奢な身体に視線をやる。
 あっけなく他の男の腕の中に収まったそれを見て、不意に嗜虐心がわいた。
 顎を掬いあげて、口づける。
 突然のことに目を見開いているリディアから視線を外すことなく、口を開かせ、咥内に進入した。
 可愛らしい顔が歪み、細い腕が必死にエドガーの身体を押し返してくる。
 抱きすくめることなく、扉に彼女を押しつけて、顎を掴んだ右手だけでリディアの自由を奪い、蹂躙する。
 荒い息づかいと水音の合間に、涙混じりの声が漏れる。
 苛立ちはかき消え、純粋にキスに夢中になりながら、これは特大の平手打ちが来るな、と思考の片隅で思う。
 彼女の身体に触れないのは、エドガーなりの自戒だった。抱きしめ、彼女の形を感じれば、衝動を止めることができなくなると危ぶんだ。
 請うようにして舌を絡める。甘い痺れが背筋を這う。
 理性が焼き切れそうな気配を感じて、エドガーは名残惜しく思いながらもリディアを解放した。
 くったりと扉に背中を預けるリディアが、涙を浮かべた瞳でエドガーを見る。彼を魅了してやまない金緑の瞳に、その瞳が浮かべる悲痛の色に、エドガーはひどく動揺した。
 いつもの気の強い瞳で、燃えるように彼を睨めつけると想像していたのに。
 振り上げた手で頬を打って、顔を真っ赤にして去っていくと思っていたのに。
 リディアは握った拳を扉に押しつけるようにして、深く俯いた。声がくぐもって不明瞭だけれど、震える声は、泣いているようにも思う。
「こういうことすれば、女の子は誰でも、あなたの言うなりになるとでも思ってるの?」
 最低、と吐き捨てて、書斎から出て行くリディアを、エドガーは引き止めることができなかった。
 口づけをするのは初めてではない。初めて不意打ちで唇を奪った時も、彼女はひどく衝撃を受けていたけれど、今のように打ちひしがれたような顔をすることはなかった。
 ただ純粋に怒って。
 その真っ直ぐな感情は、とても心地がよかったのに。
 単純で、真っ直ぐで、お人好しな少女。ずっとそう思っていたのに、いつからか彼女の心には幾層もの襞が育まれていたらしい。
 衝撃に立ちつくす。さまざまな可能性が脳内を巡って、エドガーは呆然としてしまう。
 身体の熱はとうに冷え、代わりに胸の奥の方が熱くなる。
 久しく感じなかった躍動に、エドガーはしばらくの間、そこを動くことができなかった。
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