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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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伯爵と妖精パロ えせ兄妹

ずっとエドガー視点だったので、ちょっとリディア視点を書いてみました。この子いったい何歳なんだろう…(え) 原作どおりだとエドガーが13歳として、10歳くらいになるはずですが、明らかに幼いですよね…!(爆
そしてまたもやニコを忘れていました。もうこのシリーズではこのまま空気にしてやろうかな…(ひどい


+++



 少し前に、リディアの家に新しい住人がやってきた。妖精以外と親しく付き合えたためしのないリディアは、最初はひどく憂鬱だった。村の男の子たちはリディアのことをいじめるし、女の子たちはそろってよそよそしい態度をとる。彼らと一緒にいるとリディアはいつもとても悲しくなるのに、家の中にまで来られたら息が詰まってしまう。
 けれどやってきた人は、リディアが想像していたような乱暴で意地悪な男の子ではなかった。エドガーと呼ばれたその人はとてもきれいで、美しい妖精のようだった。金の髪に菫の瞳。リディアは何度も母親に彼は本当に人間なのかと聞き、アウローラはそのたびにくすくすと笑っていた。
 家族になるのだと聞いて、嬉しかった。仲良くなりたいと、そう思った。
 けれど状況はリディアが考えていたよりもずっと穏やかではなくて。リディアは彼に自分の望みを押し付けてはいけないということをすぐに悟った。
 家に来てしばらく、エドガーは寝たきりの生活を送っていた。熱が下がれば、火傷の痕が消えれば、彼は元気になる。そう思ってリディアは自分にできる限りの手伝いをした。薬草をとったり、ハーブを集めたり、エドガーの世話をする母親の代わりに簡単な家事を手伝ったりもした。両親の関心がエドガーに一心に向けられても、リディアは寂しさをこらえて我慢した。
 けれど彼は、怪我が治っても元気にはならなかった。
 夜になると毎晩うなされていた。隣の部屋から聞こえる悲鳴にも似た声が怖くて、心配で、リディアは何度も真夜中にエドガーの部屋に足を運んだ。顔をあわせてもいつも不機嫌にあしらわれるだけで、リディアは悲しかったけれど、めげはしなかった。
 エドガーはとても苦しそうだったから。
 苦しんでいる人を、ひとりきりにしてはいけないと思ったから。
 これ以上嫌われないようにと、みんなが気味悪がる瞳を伏せて、リディアはずっとエドガーのそばにいた。はやく元気になって、と、それだけを思いながら。

 それがまさか、こんな風に笑いかけてもらえるようになるとは思っていなかった。
 つないだ手はリディアの手よりも大きくて、温かい。力が強そうには見えないのに、リディアが力を抜いてもつないだ手は解けないし、彼女が意思に足をとられてよろけるたびに力を入れて支えてくれた。
 ちらりと見上げると、まっすぐに前を向いた、やわらかな紫色の瞳が見える。不機嫌の取れたその瞳はとても穏やかで、優しい。リディアはちょっとためらってから、兄さま、と呼びかけてみた。うん? とエドガーは返事をして、そのままの穏やかな瞳でリディアを見る。まっすぐに見る。金緑の瞳と視線をあわせても、彼はかけらも気味悪がるそぶりなど見せない。
 リディアは嬉しくなって、また兄さま、と呼ぶ。2度3度と重ねて繰り返すとエドガーは笑って、どうしたのリディア、と聞いてくれた。
 とても心が浮き立って、リディアは顔中の筋肉を緩ませて笑う。エドガーも笑っていた。その笑顔は、苦しくなさそうに見えた。


「リディア、すっかりご機嫌ね」
「あのね、あのね母さま、兄さまって呼んでいいって!」
「エドガーが?」
「うん! それでね、リディアって呼んでくれて、笑ってくれたの。あたしの目、変じゃないって。んと……きれいだって」
 最後は少し恥ずかしくて、口をもごもごさせながら言うと、アウローラはくすくすと笑ってリディアの頭をなでた。
「よかったわね、リディア」
「うん!」


 その夜も、リディアはエドガーの部屋にそっと入っていった。もう大丈夫だろうかとは思ったのだが、毎日来ていたから気になって、なかなか夜に寝付けなくなってしまったのだ。
 足音を立てないようにそっとそっと近づいていく。聞こえてくる寝息は浅くて、リディアは眉をひそめる。
 まだ、苦しそう。
 昼間のことで安心して、今日はポプリを持ってきていなかった。リディアは眉尻を下げて立ち尽くす。今からでも持ってこようか。そう思って踵を返しかけたとき、エドガーが魘されているような声を漏らした。
 慌てて駆け寄って、そっと髪に手を触れる。今よりもっと幼いころにアウローラがしてくれたように、苦しくないのよとゆっくりと撫でた。額に汗が浮いているのに気づき、夜着の袖で拭いてやる。いっそ起きてくれればいいのにと思いながらしばらくそうしていると、その内にエドガーの寝顔が安らかになった。
 安堵して、けれど離れがたかったから、リディアはベッドにもたれて座り込んだ。そのまま瞼を落としてしまいそうになったけれど、エドガーが身じろぐたびに気になって振り向いてしまう。もぞもぞと体勢を変えて、リディアは最終的に、ベッドに突っ伏すようにして眠ってしまった。


 体が浮くのを感じて、リディアは意識を浮上させた。少し危なげに揺れながら誰かがリディアを抱き上げている。なんだろう、と思っているうちに柔らかな地面に着地した。
 ぼんやりと目を開けると、きらきらした金色の光が見えた。
「……兄さま」
「リディア、起きたの?」
 ここはエドガーのベッドの上だ。けれどそう認識する前に、リディアは自分と入れ替わりにベッドから出ようとしていたエドガーに手を伸ばした。まだ半分寝ぼけながら、シャツの袖をきゅっとつかむ。
 エドガーは少しその手を眺めた後、やわらかくリディアの頭を撫でてくれた。
「まだ早いよ。変な格好で寝ていたから寝たりないだろ。僕はもう起きるから、ゆっくりお休み」
 言われるまでもなく、眠くて起き上がれそうにない。たどたどしく髪の上をすべる指に確実に夢の世界へと誘われながらも、リディアは懸命に目を開けようとする。
「兄さま」
「ん?」
「だいじょうぶ?」
 焦点がいまいち合っていない視界の中でも、エドガーの瞳が大きくなったのはわかった。手の動きも止まり、沈黙する。その間にもリディアは眠ってしまいそうになり、こらえきれずに瞼を落とす。
「……うん」
 ささやき声のような優しい音が、ゆっくりとリディアに落とされた。手のひらがリディアの頭を覆い、やさしく撫で付けるように動く。
「ありがとう、リディア」
 染み入るような柔らかな声音をかすかに聞きながら、リディアはそのまま眠りの世界へと入っていった。
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コメント
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こんばんは
暑い日がつづいていますが、一樹様お元気でしょうか。
この前は長~いカキコに丁寧にお返事くださってあいがとうございました。
落書き帳見つけました。
bbsと同じページにあったんですね。
見つけてみたら兄妹シリーズが始まっていて嬉しい悲鳴をあげました。
エドガーには事件後にこんな風に穏やかな少年時代を送ってほしかったと思いつつも、成長してあのステキな性格にならないと、やっぱりエドガーじゃないよねとも思ってしまうので、一樹様のエドガーが今後どのように成長していくのか楽しみにしています。
もちろんリディアとどんな風に両想いになっていくのかも期待しています。
トワイライトの漫画読みました。
ツボの(笑)エドワード視点のお話の漫画だったので、すごく嬉しいです。
もとの小説ももちろんですが、一樹様の漫画の「僕ももういない」のエドワードが泣けないのに泣いてるように見えてすごく切なくなりました。でもあのシーンのエドワードはやっぱり上半身裸(多分)でったんでしょうね。
原作を読んでて胸元がはだけてるだけなのかどうなのかと思ってたのですが。
そりゃあの観光客の家族のお父さんも不審な目で見るよと今回の漫画を見て改めて思いました。
そういえば洋書のトワイライトの新刊が出ましたね。無謀にも翻訳版が出る前にトライしてみようとAmazonで注文しました(^^;
お盆休みのない会社なので夏休みがあるのがうらやましいですが(笑)色々更新があるかな~と期待してます。
兄妹シリーズ、原作設定も含め楽しみにしています。
りら 2008/08/02(Sat)02:01:27 編集
こんばんはv
暑い日が続いて、わかりやすくばててます管理人です(えへ)でも、クーラーの効いた部屋にいすぎても調子が悪くなるので厄介だなあと思います。今年も日陰にこもって乗り切ろうと思います(ぐっ)
落書帳、見つけてくださってありがとうございますvなんだか思いの外続きが手につかず、あれー? と思っていますが、のんびりかいて行きたいと思います^^ エドガーの性格はどうなるのでしょうね…! きっとそんなに原作と変わらないのではないかなと思っていますが、パロごとに少しずつ性格(というか振る舞い方というか)が違っているので、えせ兄妹のエドガーがどんな風になるか、私も楽しみですv
夏休みなので私もいっぱい更新したいなあとは思っていますが、どうなることやら、です。更新する時は一気にすると思いますので、気長にお待ちいただければ幸いですv
トワイラ漫画にもコメントをありがとうございますv暗いシーンを描くのは大好きなので(笑)、死にそうなエドワードのシーンが良かったと言っていただけて嬉しいです…! 原書版を買われたのですねー私は挫折することが目に見えているので買っていないのですが(えへ)、原作でしか味わえないものもあるんだろうなあと、ちょっと羨ましく思ったりします。頑張ってください…!
ではでは、コメントをありがとうございましたv
【2008/08/07 22:04】
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