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叶わない願いごと五題

04.神様に逢いたい。
---オリジナル(オリンポス)/キュレイア+サラム

拍手ログです。
カプというよりコンビの二人。


+++

オリンポスの神々が住まうとされるオリンポス神山。そのなかでももっとも高い場所にある小さな丘の上で、キュレイアは膝を抱えて座っていた。
神山に実際に住んでいるのは神ではなく、神憑きと呼ばれる人間と、身の回りの世話をする神官たちだけだ。神様なんていない。一番空に近いこの場所にいてさえ、その気配の片鱗を感じることさえできない。
「ねえサラム」
「んあ?」
「神様って、どこに行けば会えるの」
キュレイアは神の存在など信じていない。幼い頃は今よりも敬虔な心を持っていたものだけれど、彼女にとって兄にも等しい人が死んでしまった時、信仰心なんてものはどこかへと消え去ってしまった。
それはサラムも同じで、いや、サラムの方がもっと淡泊な考えを持っていて。だから急にそんなことを言い出したキュレイアを、サラムはまじまじと見詰めた。
けれど目を逸らしたままでじっとしているキュレイアの様子に何かを感じ取ったのか、何を馬鹿なと笑い飛ばすことはせずに、彼は柔らかく口を開く。
「知らねえのかキューア」
「何が」
「カミサマは、いつだって心の中にいるんだぜ」
「寒いわよ」
一刀両断すると、彼は気にした風もなく肩を竦める。
「カミサマに会って、どうするつもりだ」
「ひっぱたいてやるのよ」
「そりゃまた」
激しいなと笑うサラムを睨みつけ、キュレイアはだって、と声を荒げる。
「だって、ひどいじゃない。どうしてこんなことばっかり。リーンが可哀想。セツナだって」
「キューア」
「知ってるわ。これがあたしたちの、神憑きの役目だもの。でも何で、よりにもよって…!」
「キューア」
「わかってるってば!」
リーンの兄が死んだのは、もうずいぶんと昔のことだ。立場を考えれば仕方のないことだった。彼が殺されるのも、セツナが彼を殺したことも。
神憑きの宿命だと、あっさりと受け入れられたのは、けれどごく一部の人間だけで。当事者たちは今も苦しみ、諦念にも似た気持ちでそれを受け入れていたキューアの心にまで波紋を呼ぶ。
事実を知って、リーンがあんなにも取り乱すのを見るのは初めてだった。いつでも穏やかで、柔らかくて。あんなにも泣いて、叫んで、怒りを露わにするほどエクトの死が彼女の心をえぐっていたのだと、今更ながらに気付いたのだ。
「本当はね、自己嫌悪してるだけなのよ」
「うん?」
「あたしはもう諦めてしまえていたから。リーンももうきっと平気なんだって、勝手に思ってたの」
そんなはずはなかったのにと、顔を俯けてしまうキュレイアの横に座り、サラムは静かに彼女の名前を呼んだ。
「お前が苦しむことでもないと思うぞ」
「…そうかもしれないわ」
「あと、カミサマをひっぱたくこともない」
何を言っているのかがわからなくて、キュレイアはそっと顔を上げる。サラムは口元を緩めながら、激情を湛えた瞳を真っ直ぐに前へと向けていた。
「この世を作っていくのはいつだって人間だ。ひっぱたくならあれだな、まず神山にいる奴を順々に殴り倒していくのがいいな」
うんうんと真面目に頷くサラムを見て、キュレイアは一瞬動きを止めたが、それもそうかと頷けるところもあったので、頷いた。
「じゃあまずあんたから殴ればいいのかしら」
「勘弁しろよ。お前に殴られたら下界まで吹っ飛ばされちまう」
失礼ねと怒鳴るキュレイアに、サラムは大した気負いもなさそうに笑った。
「お前もな、どうにもできないことで落ち込むな。どうにかできそうなところで頑張ればいいだろうが」
珍しい、はっきりとした慰めの言葉をかけられて、キュレイアは目を瞬かせた。その言動を揶揄することもなく、彼女は素直にそうねと頷く。
「じゃあサラム、花摘むから、適当な籠持ってきてよ」
「…ここから近くの宮までどれだけかかると思ってるんだ」
「そこから滑り降りればすぐよ」
「死ぬだろうが」
よろしくー、と手を振るキュレイアに、結局サラムは立ち上がる。風が通り抜け、ふわりと心地よい香りが立ち上った。

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