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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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落書き帳50000ヒットのキリリクです(遅くなってすみません…!)
リクは、伯妖パロの幼馴染みエドリディで、両思いになった後です。
個人誌「...everlasting fairy tales.」を持っていらっしゃる方は、そこに収録されている書き下ろし作品の続きになりますので、併せてお楽しみ頂ければなと思います。
↓だけでも読める代物ですので、安心してお読みください…!(なんか変な言い方)
リクをくださった方、どうもありがとうございました! ひとまずこちらにアップしておきますが、気力ができたら本館(?)の方にきちんとアップしたいと思います(><)



+++



エドガーの髪に花びらがふわりと舞い降りた。
どこから来たのだろうと覗き込むと、その影から小さな小さな妖精が姿を現した。
可愛らしい、花の妖精だ。微笑むとエドガーが不思議そうな顔をする。妖精がいるの、と答えて手を伸ばすと、彼は少し身動いだ。
リディアは頓着せずに妖精を指の腹でくすぐるように撫でた。手のひらに風に乗ってさらりと揺れたエドガーの髪が当たる。
妖精がにこりと笑った。リディアもにこりと笑って手を離した。
そうして視線を移した先には、エドガーが不満げな顔をしてリディアを見下ろしていた。
「エドガー?」
「妖精じゃなくて、たまには僕を撫でてくれればいいのに」
「……撫でて欲しかったの?」
以外に思って見つめると、彼はこれ以上ないと言うほど真面目な顔をして頷いた。
ふざけているのか本気なのかよくわからない。けれどあまりにも真っ直ぐに熱の籠もった視線を向けてくるものだから、リディアは思わず目を逸らしてしまった。
―――髪を撫でてほしいなんて、子どもみたい。
思って、頬を緩める。
でもそういえば、リディアだって頭を撫でてもらうのは好きだ。子どもの頃から、今だってエドガーが彼女を宥めるように髪に指を埋め、地肌を優しく撫でてくれるのが好きだったりする。
―――たまにはあたしから撫でてあげてもいいかしら。
どこか残念そうな顔をしてリディアの髪をもてあそんでいるエドガーをそっと伺いながら、リディアはそんなことを思った。



エドガーとリディアはスコットランドに来ていた。寝泊まりしているのはリディアの家ではなく、幼い頃にエドガーが喘息の療養のために過ごしたマナーハウスだ。
もとはシルヴァンフォード公爵家の持ち物だったそこは、いまでは回り回ってアシェンバート伯爵家、つまりエドガーのものになっている。
途中、まったく関わりのない他人に使われていたこともあったが、マナーハウスの大部分はエドガーの記憶にあるままの姿で残っているらしい。
あちらこちらの扉を開けては懐かしげに目を細める姿を、リディアは横でそっと寄り添いながら見つめていた。
つらくはないだろうかと思う。けれどエドガーは柔らかく笑うから、リディアはそれを問うことはせずに、彼と一緒に笑っていた。
幼い頃に二人で遊んだ丘の上まで散歩に出た後、待ちかねていたレイヴンに迎え入れられ、穏やかな雰囲気でディナーを食べた。
ダイニングルームの部屋は広く、二人きりでいるには少し寂しい。エドガーもそう思ったのか、食事がすむとすぐに部屋を移動してエドガーの私室に移った。
「エドガーの、お父さまの部屋?」
「うん。でも以前と一緒なのは壁紙とシャンデリア………と、大きい家具くらいかな。僕の好みになるように、また模様替えをしなくちゃね」
リディアはエドガーに手を引かれながら、ふかふかのソファに座るように促された。エドガーが隣に座ると、すかさず使用人が簡単なお菓子と紅茶、ブランデーを持ってくる。
カップに1杯そそいだのを見計らって、エドガーが下がるように指示を出す。
「続きの部屋にある寝室も、ずいぶんと明るい雰囲気になってたな。ちょっと寝づらいかもしれないけど、ベッドはちゃんと新しいものに変えておいたから、リディアも快適に眠れると思うよ」
「……なんでエドガーの部屋であたしが寝るのよ」
「今夜は一緒に寝ようよ」
肩に回された腕にぐっと力が入る。顔の距離が近づき、扇情的な灰紫の瞳に自分の姿が見えたと思ったところで、リディアは慌てて腕を突っ張った。
「な、なに言って……もう、ふざけないで!」
「ふざけてない」
「まだ結婚してないでしょ!」
「僕たちは相思相愛で、正式な婚約者同士だ。一緒にベッドにはいったって、なにもおかしいことはないよ」
「そ、そういう問題じゃないわよ……!」
ぐぐぐと力を入れるエドガーに、ぐぐぐと力を入れて対抗しながら、リディアは顔を赤くして抗議する。しばらくその状態が続いていたが、エドガーに大きく抱え込まれて、リディアは彼の胸の中に収まってしまった。
「そんなに嫌?」
耳の奥に直接言葉が流し込まれるかのような感覚に、リディアはふるりと背筋を震わせた。
抱きしめられて、こんな風に切なげに囁かれると不安になる。無闇に拒絶したら、もしかしたらエドガーを傷つけてしまうのではないだろうかと。
リディアは弱って、おずおずとシャツの裾を掴みながらエドガーの肩に額を当てた。
「い、いやとか、そういうんじゃ……」
「じゃあ、いいじゃないか」
「でも、だって」
軽いキスも、抱擁も、エドガーと交わすものはリディアに深い安らぎを与える。幼い頃によくしたように、抱き合ったりじゃれついたりするのだって、羞恥心は感じるけれど嫌いではない。
けれどリディアは、最近になってやっと、リディアが知らないその先をエドガーが求めているのだと気付いたのだ。
キスをして、抱きしめ合うだけではないその先。エドガーの唇や指先は、触れあうたびにリディアにそれを予感させる。
身体が熱くなって、肌が疼いて、自分が自分でなくなってしまうような感覚を受け入れるには、リディアにはまだ心の準備が足りなかった。
押し黙ってしまったリディアを宥めるように、エドガーは長い指を髪に差し入れてきた。ゆっくり地肌を擦る感触に、リディアはたまらなくなる。
とても心地のいい触れあいなのに、胸が締め付けられるのはどうしてだろう。
「……なにもしないから」
「え……」
「君が嫌がることは、なにもしないから。だから、側にいてくれないか?」
腕が緩んだのにあわせてそろりと顔を上げる。エドガーは笑っていたけれど、瞳は心もとなさそうに揺れていた。
リディアは瞬いて、その表情をまじまじと見つめる。
「……寂しいの?」
「君がいれば寂しくない」
子どもみたいな顔をしている、と思った。子どもの頃ですら、こんなに無防備に、崩れ落ちてしまいそうなほど柔らかな顔は見たことがないというのに。
リディアはそっと手を伸ばし、鋭角的な線を描くエドガーの頬を撫でる。
たまにはあたしから、触れてみるのもいいかもしれない。それでエドガーが喜ぶなら。
「……本当に、なにもしない?」
「君が嫌がることは、なにも」
「側にいればいいの?」
「うん。君に触れていたい」
エドガーの頬に触れているリディアの手に触れて、彼はやんわりと目を閉じた。口元に穏やかな笑みが浮かぶ。不意にそこに触れたくなって、リディアはあわてて視線を落とした。
実際に何も起こらなくても、結婚前の娘が男性の寝室で眠るなんて、常識で考えてとんでもないことだとも思うが、リディアの本音としては、エドガーの隣に寝ころぶことについてはあまり抵抗はなかった。
過剰な触れあいがなければ、子どもの頃に草の上で二人寝転んだことを思い出すていどの認識しかない。
だから頬を赤くしながら、彼女は短く、じゃあ一緒に寝る、と答えた。


優しく頭を撫でてあげよう。そんなことを考えていた。
のに。


「……うそつき」
「なにが?」
「なにもしないって、言ったくせに……!」
ベッドの上で、エドガーに背中から抱えられる格好で、リディアは顔を赤くしながら呻いた。
身じろぎするとぴったりとくっついているエドガーの体温が鮮明になってしまうから、恥ずかしくて動けない。
それなのに彼は遠慮なくリディアを抱きしめて、身体を離そうとはしないのだ。
「なにもしてないじゃないか」
「キスしたじゃないの!」
「リディアの方からしてきたんだよ?」
「あたしは、おやすみの挨拶にと思って……!」
ナイトウェアにガウンを着込んだ姿でエドガーの部屋に行くと、彼は待ちかねていたように両手を広げて迎えてくれた。
一杯だけブランデーを飲んで、導かれるままにベッドに横になって。
あんまり優しい瞳で見つめてくるから、リディアも安心しきっていたのだ。これが間違いだった。
思わず手を伸ばして、まだ少し湿っている金色の髪をやんわりと梳いた。これも間違いだった。
そしてお休みなさいと挨拶して、エドガーの頬に口づけしようと乗り出して。
それを彼は、唇で受け止めたのだ。
咄嗟に反応できないでいる間に頭を引き寄せられて、触れあっていただけの温もりがより深く絡んだ。エドガーの熱が彼の重みと共にのしかかってきて、リディアはうまく抵抗することができなかった。
「でも、嫌じゃなかっただろ?」
「………っ」
飄々とした言葉に、リディアは唇を噛んで身体を縮こまらせた。恥ずかしい。恥ずかしい。エドガーの言葉に異を唱えることができないことが、何より恥ずかしいと思う。
「……リディア?」
ぎゅうっと枕を掴んで、一生懸命エドガーから顔を背けるリディアを伺うように、エドガーがそっと呼びかけてくる。
「怒った?」
細い腰に回った腕に力が入り、彼女を宥めるようにそっと揺すってくる。頭を撫でるように脇腹を撫でられて、リディアは思わずくすぐったさに身を捩った。
「くすぐったい」
「怒ってない?」
「……怒ってないわ」
キスをされた直後は一発くらい殴ってやろうかと思っていたけれど、もうそんな気も失せてしまった。
力を抜いて、エドガーに抱きかかえられたまま眠ってしまおうと息を深く吸う。
後ろ頭にエドガーがやんわりとすり寄ってきた。彼がスキンシップを好むのはいつものことだけれど、やっぱりなんだかいつもより幼い行為に思える。
ふと、抱きしめられている腕の体温が気になって、リディアは心配げに眉をひそめた。
「エドガー、もしかして調子悪い?」
「え?」
身動ぐと背中に熱い感触が当たった。エドガーが微かに息をのむのを聞きながら、リディアはその熱さに少し慌てる。
「ねえ、もしかして熱があるんじゃ……」
「待った、リディア」
振り返ろうと身を捩ったところを、エドガーに制止された。余裕をなくしたような声音に驚いて、思わず動きを止める。
「振り返っちゃ駄目」
「でも……」
「駄目。本当に我慢できなくなるから」
何の話だろう。振り向こうにも、エドガーの腕ががっちりとウエストを固定して離さなかったから、リディアはしばらくもぞもぞ動こうとしていたが溜息と共に諦めた。
「ちょっと熱く感じるかもしれないけど熱はないよ。健康体だから、大丈夫」
「本当?」
「うん。だから安心してお休み」
リディアの胸元に垂れた髪に触れながら、エドガーは身動いでこめかみにキスを落としてきた。
なんとなく腑に落ちないものを感じながらも、エドガーの呼吸が緩やかなものに変わったとわかると、リディアもこれ以上追及しようとは思わなかった。
「……お休みなさい、エドガー」
近すぎる体温が気になって、実はなかなか寝付けそうにない。けれど目を閉じているだけで目蓋の裏が幸福な色に染まりそうだと、リディアはそんなことを考えながら目を閉じた。
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コメント
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こんばんは♪
こんな感じの雰囲気大好きです~。幼馴染みがまた読めて嬉しいです。リクされた方にも感謝したいです。もちろん書かれた夜深さんにもです。
まったくエドガーはなにを考えてるんだか!す。まあリディアを前にしたら一つでしょうけれども。また伺いますね、では!
じゃが 2008/08/07(Thu)23:47:49 編集
こんばんはv
幼馴染、楽しんでいただけたようで何よりですーv両思い後の二人はひたすららぶらぶなので、安心して書けます^v^
エドガーの考えることなんて一つですよね!(笑)彼にはもう少し煩悩をどこかにやってほしいものです…でも煩悩がなくなったら、きっとエドガーじゃなくなっちゃうんでしょうね…!
では、コメントをありがとうございましたv
【2008/08/13 10:32】
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