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叶わない願いごと五題

03.魔法が使えたらいいのに。
---オリジナル(花守)/ロウ+レイカ+シズク+空木

拍手ログです。
他愛のない現実逃避。


+++

「魔法が使えたらいいのになー」
唐突にぽつんとロウが零した言葉に、森の中を進んでいたレイカたちはきょとんと目を瞬かせた。
「精霊の力のこと? ロウの力は、十分強いと思うわよ」
「あ、そうじゃないんですよ巫女さま。そうじゃなくて、もっとこう奇想天外で奇天烈な面白い奴がいいなって」
「…どんな力だ」
呆れたようにシズクが溜息をつくのにも挫けた様子はなく、ロウはますます目を輝かせる。
「ほら例えば、シズクをいっつもにこにこ笑ってるお気楽野郎にするとか!」
盛大に噴き出す音が聞こえ、シズクは顔をしかめる。レイカまでもが笑みを零したことに、彼はますます不機嫌になった。
「そりゃあいい! この無愛想な仏頂面には飽き飽きしてたところだ。いっぺんお気楽野郎になってみろよシズク、ん?」
「俺が魔法を使えたら」
肩に絡んできた腕を鬱陶しそうに振り払い、シズクは空木を睨みつける。
「お前がもっと大人しくて誠実な真人間になるよう祈ってやるよ」
「お前の目は節穴か? これ以上どこをどうすれば俺さまが今以上に誠実で格好良い、美形の真人間になれるっていうんだ?」
「俺の目を心配する前に、自分の脳みその心配をするべきだな」
途端に険悪になり出した二人の空気に、ロウはあーもう! と割ってはいる。
「いちいち喧嘩するなよいい年してさー! 巫女さま、巫女さまは魔法が使えたら何かしたいことありますか?」
「私?」
目の前のやりとりを楽しそうに眺めていたレイカは、目を瞬かせる。
「面白いことは、思いつかないわ」
「面白くないことなら?」
食い下がるロウに苦笑を零すが、邪気のない瞳に見詰められて、レイカは笑みを零す。
「早く、アヤメに会いたいと思うわ」
穏やかな言葉に、あーやっぱり巫女さまはそう来ますよねとロウが笑う。まったく面白みのないと言いながら、空木がシズクから離れた。シズクだけが、何かを考え込むようにレイカをじっと見詰めている。
「もし魔法が使えたら、」
シズクが静かに切り出す。真っ直ぐにレイカの黒曜石の瞳を覗き込む、その様子はどこか切羽詰まっていた。
「こんな風にまだるっこしく、俺たちが集まることもなかったな」
レイカがその視線を受け、目を細めてそうねと頷く。
「あーそれは寂しいなあ! 菖姫さまのこと考えると不謹慎だけどさ。うん寂しい寂しい。やっぱ魔法なんていらないや」
騒ぐロウに、呆れたように空木が溜息をつく。
「もともとあり得ない話だろうが。んな真剣になって考えんなよ」
視線を落としたシズクを見守って、レイカはまた、そうねと頷いた。そしてぽんと手を打つ。
「ああでも、魔法が使えるなら」
「ん?」
「私、そろそろゆっくり眠れる場所に行きたいわ」
にこりと向けられた笑顔に、ロウの顔が少しだけ引きつる。すっとレイカが視線を移した先を見ると、見たことがある気がするたき火の跡が残っていた。
「………また同じ所に戻ってきたか」
「あーマジかよ、さすがに野宿も飽きてきたぞ…」
森のまやかしに惑わされっぱなしの一行は、いい加減に辟易してきたと、げんなりした表情を見せた。
「ロウ、私が精霊に聞いてもいいのよ」
「だ、駄目ですよ! 巫女さまが精霊呼ぶと、不必要に集まって来ちゃうんですから…!」
「あと一回だな、ロウ。これで無理なら諦めろ」
「ちくしょー……」
がっくりと肩を落とすロウに苦笑をし、レイカは空を仰いだ。青空が徐々に深みを帯びてきているように見える。シズクのいうとおりにあと一回試して出られなかったら、また野宿をする羽目になりそうだ。
それは遠慮したいと素直に思いながら、自身を鼓舞するように威勢よく歩き出したロウの後について、もう何度も通ったたき火の横をすり抜けた。

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