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叶わない願いごと五題

01.白いツバサが欲しい。
---オリジナル(楽園)/ファノン+フィリア


拍手ログです。
ファノンはヤティーナとかレイシウスとかと同世代(?)なんです。



+++


ツバサが欲しい、と、これまでに何度願ったことだろう。
王家の愛妾の息子として生まれ、王位継承争いに巻き込まれて国を出奔し、気ままに大地を彷徨う流浪の民になってからずいぶんと月日が流れた。
精霊の印を受けたこの身はなかなか老いず、不慮の事故に巻き込まれて朽ちることなくここまで来た。
この暮らしは、これはこれで気に入ってはいる。仲間が増えたし、長い時間を共に過ごせる友人もできた。けれどふとした時に思ってしまう。白いツバサが、この背にあったならと。
「ファー?」
銀色の光が煌めいて、物思いに沈んでいたファノンの視界を横切る。ん、と空を見ていた視線を下ろすと、本物の空よりも美しい空色をした大きな瞳が、じっとファノンを見上げていた。
「どうした、フィル?」
「ファーも、空が恋しいの?」
首を傾げて問う少女の瞳はひどく澄んでいる。シリィが言うには、この少女―――フィリアは、もとは天使だったという。ツバサをおられた天使が人間になるなんて話をついぞ聞いたことがなかったファノンはその話を鵜呑みにしていたわけではなかったけれど、フィリアの青い青い、蒼天の空のような瞳は、ファノンの感傷に沈んでいた心をたやすく揺るがした。
一群の長として、長く時を生きたものとして、飄々とした顔を滅多に崩さないファノンが、柔らかい苦笑を漏らす。自分の鳩尾ほどまでしか背がないフィリアの頭をぽんぽんと撫でた。
「ちょっとな、友人のことを考えてたんだよ。だいぶ昔に別れた奴らでね……時折無性に会いたくなる」
「空にいるの?」
「いいや、まだ土の上にいるよ。俺よりも長生きなんだ」
死者の亡骸は地底へ、魂は空へと昇るというのが通説だ。フィリアはファノンの言葉を聞いて、ほっと表情を緩めた。
「じゃあ、会いに行けばいいわ」
「遠いところにいるからな……しかも、片方はどこをうろついてるのかわからないときた。この人数を連れて行ける距離じゃないから、ま、おいおいな」
「でも…」
「いいんだよ、ありがとうな、フィル」
眉を下げるフィリアに、にっと笑い、くしゃくしゃと髪を乱す。
「なあ、フィル。お前は空を飛んだことがあるのか?」
唐突な質問に聞こえたのだろう。フィリアが天使だという話は、シリィの作り話だとか、嘘でないにしても何かの比喩だと思っているものが多い。ファノンもそう思っていると思っていただろうフィリアは何度か瞬きをして、けれどあっさりと頷いた。
「あるわ」
「遠いところまで行けるのか?」
「風さんの機嫌がよければ、どこまでだって行けるのよ」
「そうか」
脳裏に思い浮かべる友人たちの顔は、どれだけの時を経てもいやに鮮明だ。レイシウスは今頃どこを流離っているのだろう。ヤティーナは、一人きりで寂しい思いをしていないだろうか。
ツバサがあれば会いに行けるのだろうか。居場所のわからないレイシウスはともかく、ヤティーナの顔くらい、見に行けたりするのかもしれない。
「…ファー、天使の羽が欲しいの?」
「あると便利だなあってちょっと思ったけどな」
くくっと笑い、ファノンは首を振った。
「でも駄目だな、俺にそんなファンシーなのは似合わねえや」
ぱちくりと目を瞬かせて首を傾げるヤティーナと、冷ややかな目で静かに後退るレイシウスが目に浮かぶ。笑い飛ばしてくれればいいものを、彼らはそんなことさえしてくれないだろう。それは何というかとても、悲しすぎる。
「悪いな、変な話をして。んな顔するな、大丈夫だ。俺たちは気が長いからな、いつか会いに行く機会もあるだろうよ」
この話は終わり、と、歩き出そうとしたファノンに、フィリアがあのねと呼びかけた。
「ファノン、いつか、私がまた飛べるようになったら、そしたら絶対に、お友達のところまで連れてってあげるわ」
きゅっと拳を握ってそんなことをいうフィリアに、それは楽しみだ、と、ファノンは破顔を返した。

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