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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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五月病ってこんな感じなんだね! と同期と言い合っている昨今ですこんにちは(´ワ`*)
寝ても寝ても寝たりないですーという願望があらわれたエドリディを投下します^^


+++




 髪が緩く引っ張られ、ふわりと背に落ちる。
 ブラシの柔らかな毛が地肌をくすぐり、長い髪の間をするすると進んでいく。
 合間合間に彼の指先がリディアの地肌をすり、心地よいような、くすぐったいような刺激を与えていく。
 さきほどから飽きずに繰り返されているその感触に、少しずつ落ち着かない気分になってくる。
「あの、エドガー」
「ん?」
 彼女の夫は上機嫌で、鏡台の前に座ったリディアを鏡越しに覗き込んできた。
 右手にはヘアブラシ、左手には彼女の髪を一房持っていて、リディアがなにか言う前に左手を自分の口元に近づけて髪に口づける。
 見慣れた動作だとは思うのに、ぱっと顔を赤らめてしまう。エドガーがうっとりとした顔で「いい香りだ」なんて呟いているものだから、余計にだ。
「もうそろそろ、乾いたんじゃないかしら……」
「うん。ふわふわしてきた」
 にこにこと笑うエドガーは、それでもリディアの髪をいじることをやめようとしない。
 落ち着かないのだけれど、嫌ではないのだから、やめてと言うのもおかしいかしらと、リディアは眉を寄せて考える。
 それに気づいたエドガーは、不思議そうに目を瞬かせた。
「どうしたの、リディア」
「あ、ええと」
 鏡越しに見るエドガーの像はほんの少し歪んでいる。
 本物の彼を見ようと小さな椅子の上で身じろぐと、肩を包むようにして支えてくれた。
 どういうわけかとても安心して、甘えるように身を寄せてしまう。
 カタン、と軽い音がした。
 ヘアブラシを手放したエドガーは、リディアを抱え込んでくすくすと笑っている。
「眠くなっちゃった?」
「……そうかも」
 言われるとそんなような気がしてきて、ふわ、とあくびが漏れる。
「アルヴィンも、頭を撫でてるといつの間にか眠そうにしてるんだよね」
「あの子は赤ちゃんだもの」
「きみだって、僕だってそうじゃないかな。子どもの頃を思い出して、きっと安心するんだ」
 ええ、そうかも。
 思いながら、ふと気になって、エドガーを見る。
「エドガーも?」
「うーん、多分ね」
 まじまじと見ていると、エドガーが面白そうに彼女を覗き込んでくる。
「試してみる?」
「え? えっと……」
 間近で輝く灰紫が期待に満ちた目でリディを見ている。気恥ずかしさよりもおかしさが勝って、リディアもくすくすと笑い出した。
「試してみるわ。座ってくれる?」
「ベッドに行こうよ。本当に眠ってしまったら大変だ」
 それもそうだと頷いて、ベッドまでのわずかな距離を、手を繋いで歩く。
 部屋履きを脱いでふかふかのベッドに腰掛けると、エドガーはさっさとリディアの膝の上に頭を乗せた。
「えっ、エドガー」
「きみが上手に寝かしつけてくれれば、いたずらせずに終われるんだけどなあ」
「またばかなこと言って」
 苦笑しながら、彼の目蓋の上に手をかざす。素直に目を閉じたエドガーを愛しく見つめながら、さらさらの金糸をゆっくりと梳きはじめた。
 真っ直ぐに流れていく髪は、指に絡めるときらきらして、とても美しい。
 少し冷えていた指先に、彼の地肌からじんわりと熱がうつってくるようで、リディアは夢中になってエドガーの頭を撫でた。
 と、じっとしていたエドガーが身じろいで、あくびをかみ殺した。目蓋をとろんとあげて、力の抜けた笑顔でリディアを見上げる。
「……本当に眠くなってきた」
「もう寝る?」
「いたずらしたかったんだけどな……」
 緩慢な動作でベッドに転がり、リディアを引き寄せる。されるがままに彼の懐に潜り込んだリディアは、ゆっくりと頭を撫でてくれる手を感じて眼差しを緩めた。
 エドガーはもう目蓋を下ろしてしまっている。この手の動きは無意識だろうか。
 緩く身体を丸めて、リディアも目蓋を下ろす。寄り添い眠るこの時間が本当に幸せで、リディアは口元を綻ばせた。
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