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ちびっ子と遊んでると思わぬところに生傷ができてたりしますよね(自分の手を見ながら)
リディアは普段、手袋なんてしないで子どもと遊んでそうです^^


+++


 リディアの指先に小さな傷を見つけたのは、今朝のことだった。
 なにかに引っかけたのか、その小さな傷にはもう小さなかさぶたができている。
 昨日のうちにできたものだったのだろう。昼間は手袋をしていたし、夜は手元が暗くて気づかなかった。
 まだ眠っているリディアの細い指先を気遣うように撫でて、エドガーは身を起こす。今日は朝から出かけなくてはならない。
 帰ったら、どうしてそんな所にひっかき傷ができるのかを聞いてみよう。
 そう思ったけれど、この傷のことはそのまま忘れてしまっていた。


 たった今、リディアの手の甲に浅い擦り傷を見つけて、エドガーは思わず彼女の手を掴む。
 白く擦れた痕がついた周りから、赤くなっていて痛々しい。
 ひどい傷ではないけれど、面積が大きめなのでよく目につく。
「エドガー?」
「リディア。これ、どうしたの?」
「ああ、机の角で擦っちゃって」
 机の角?
 まじまじと見つめていると、リディアが居心地悪そうに手を引き抜こうとした。
 それに気づいて、わざと音を立てて、傷を癒すように口づけを落とす。
「書斎の机?」
「ううん。応接間の」
「応接間? あんな低い位置のテーブルに?」
 首を傾げるエドガーに、リディアはなぜだか幸せそうな笑みを向ける。
「あの子が頭を打ちそうになって。とっさに手を差し入れたものだから」
「ああ……。そっか、ずいぶん活発になったもんね」
 子どもの行動範囲は大人の予測を裏切るところにまで及ぶ。
 あの机が凶器になることがあるとは……と考えつつ、エドガーはリディアを引き寄せて膝の上に乗せた。
 両手をつかみ、手の甲をじっくり見た後で今度は手のひらを上に向ける。
 検分するように眺めてみると、細かな傷のようなものはいくつも見えた。
「子どもの相手をすると、生傷が増えるね……」
「そうね。元気で嬉しいわ」
「うん……」
 指先から手のひら、手のひらから手首、その上へと、なぞるように親指を滑らせると、リディアがくすぐったそうに抵抗する。
 一日二日で、傷跡も残らないくらいに治るような傷ばかりだけれど、思わずため息をつきそうになる。
 細い手首を掴みあげて、手のひらにキスをした。
 ちらりとリディアを見やると、恥ずかしそうにしているものの、顔に浮かんでいるのは満足げな笑みだ。
 痛い思いはしてほしくないけれど。
「今日は僕も一緒に遊ぼうかな」
「いいの?」
 リディアの顔が、ぱっと華やぐ。真っ直ぐに向けられるきらきらした眼差しにくすぐったさを覚えながら、エドガーは頷いた。
「男同士、外で生傷を作りながら遊ぶのも悪くないよね」
「アルヴィンも、お父さまに遊んでもらえれば嬉しいわ。あ、毛布を持って行きましょうか。途中でお昼寝したくなってもいいように」
 うん、そうしよう。
 にこにこ笑いながら、子どもよりもよほど嬉しそうに笑うリディアに口づける。
 きょとんと目を瞬かせたリディアに笑んで、もう一度ゆっくりと顔を近づけると、リディアも口元を綻ばせて目蓋を下ろした。
 痛い思いはしてほしくないけれど。
 この喜びを取りあげるのではなく、分かち合うことで、痛みも気にならなくなるだろう。

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