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早く幸せになれ……!!
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丸く膨らんだ腹を抱えながら、エドガーに凭れて目を伏せる愛しい妻のことを、彼は斜め上の位置から見惚れるようにして眺めていた。
出会った当初から何年も経過したわけでもないのに、リディアは随分大人びた。
まとう雰囲気が柔らかくなって、芯がしっかりと落ち着いて、それにそう、ふとした仕種がとても色っぽいのだ。
ついつい引き寄せられてしまうようになったのはずいぶん前からのことだけれど、彼女が子を宿してからは、そしてそれが自分の子だとわかってからは、リディアに対しての劣情が不思議と薄らいだ。
そういえば、身体が熱くなるような口づけや、背筋が震えるような触れあいを、最近はしていない。
ただ寄り添って、包んで、慈しんで。互いの体温がじんわりと交わるのを感じるのが一番心地いいと感じている。
髪と同じキャラメル色の睫毛が震えて、金色の光をはらんだ緑の瞳がふと現れる。
潤いを帯びたコーラルピンクの唇が開き、微かに彼の名前を呼ぶ。
たったそれだけのことにひどく心を躍らせて、エドガーは蕩けるような笑みを浮かべた。
「おはよう、リディア」
「寝てたんじゃないのよ。ちょっと、考えてたの」
ねえエドガー、と見上げてくるリディアの頬がなぜか赤らんでいる。
そんな顔をされたら期待しちゃうじゃないかと思いながら、平静を装って「なんだい?」と首を傾げた。
「あの……あたしのこと、好き?」
おずおずと見上げてくる潤んだ瞳に、照れ屋のリディアから発せられたとはにわかに信じがたい可愛らしい台詞に、エドガーは静かに衝撃を受ける。
そっと触れあうように寄り添っていた体勢から一気に距離を縮めて、小さな両手を握って身を乗り出した。
「決まってるじゃないか。でも、そんな一言で言い表せるほど、僕の気持ちは軽くないよ。急にそんなことを聞いてくるっていうことは、僕の態度になにか不備でも? ああ、最近の触れあいが控えめすぎたのかな。安心してくれリディア、妊娠中のきみには負担になるかなって思って抑えていた部分はあるけど、きみが望むならこれからは……」
「ちょ、ちょっと待って。違うの。イエスかノーかだけ聞ければいいの!」
ぐいぐいと迫ると、ぐいぐいと押し返された。
半ば本気、半ばからかい混じりにリディアに迫っていたエドガーは、渋々もとの体勢に戻る。
顔を赤らめつつもほっと息をつく妻に向かって、彼はあまったるい吐息で応えた。
「好きだよ。どうにかなりそうなくらい」
「あ、ありがとう……」
「でも、急にそんなこと言い出すなんて。やっぱり僕の愛情表現が足りなかった?」
「ううん、違うの。その……ちょっと、お願いしたいことがあって」
「どんなことだって叶えるよ」
内容を聞く前から真面目に言い切るエドガーに、リディアは微笑む。
心持ちエドガーから離れて、落ち着いて聞いてね、前置きをするリディアに「わかった」と頷いて、エドガーはちょっと居住まいを正した。
「別れたいとか、離れたいとかいうお願いはきかないからね」
「そんなこと言わないわよ。ええと……その、キスを、してほしくて」
恥ずかしそうにもごもごと、耳まで真っ赤にしてそんなことを言うリディアを、エドガーは有無を言わさずに抱き込んだ。
小さく悲鳴を上げるリディアの頤を持ち上げて、熱い視線を彼女に向けると、なぜかまたぐいぐいと押し返される。
「なんで拒むんだ」
「ぜ、全然落ち着いてないじゃない! まだ続きがあるのっ」
また渋々離れながら、彼女の身体を囲った腕をそのままに続きを促すと、リディアは「家族のキスがほしいの」と言ってきた。
エドガーはきょとんとした後で、ほんの少し眉をひそめる。
「それは……難しいな」
「えっ、どうして?」
「僕のきみへの想いは、どう足掻いても家族愛にはならなさそうだ」
驚いた顔をしていたリディアの眉が、ふと曇った。
美しい瞳が悲しげな色に染まる前に、エドガーは彼女の頬を両手で包んで、額をそっと触れあわせる。
「だって、こんなにも恋してる」
家族に恋をするなんて、変だろ? と笑うと、リディアはぱちぱちと目を瞬かせて、頬を薔薇色に染めた。
そうして照れ隠しにか、むう、と頬を膨らませる。
「なんでも叶えてくれるって言ったのに」
「キスならいくらでも。きみが望むように、できると思うよ」
顔を綻ばせて、触れるだけの口づけを優しく落とす。額に、まぶたに、頬に、順に触れていくと、リディアが咲き綻ぶように相好を崩した。
その表情を幸せに思いながら、エドガーは一瞬の隙を突いて彼女の唇を奪う。
リディアは数秒、戸惑うように唇を固く引き結んでいたけれど、やんわりと首筋を撫でる手のひらに促されて力を緩めた。
そこから先は、久方ぶりに訪れた、『夫婦』が触れあう時間になった。
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