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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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いつにも増して放置しておりました、お久しぶりです!
試験の準備とか勉強とかお仕事とかに追われておりました。とりあえず一段落はしましたが、またすぐに次の山がやってくる…!
しかし久しぶりにペーパーテストとかすると楽しいですね。記述式は勘弁ですが、マークは楽しい(´ワ`*)
高校生くらいのうちに「テスト楽しい♪」とか言えてたらよかったのになあとか思いつつ。年を重ねないと見えないものなんてたくさんありますよね……!

親戚のお子さん(1歳未満)が非常に可愛らしかったのでこんな話になりました(´v`*)
原作はいろいろ危ないフラグが立ってますが、子ども、ちゃんと生まれるよね……?
↓は何事もなかったかのように平穏に暮らしてるアシェンバート夫妻になります^^*

+++

 真っ暗闇の中、かわいい我が子が泣いているような気がして、ぱちりと目を覚ました。
 子どもが生まれてから、眠りが浅くなった。
 睡眠不足のせいなのか、連日の慣れない乳飲み子の世話が原因なのか、最近はいつでも疲れているような気がする。
 けれどそれを苦だと思わないのは、ひとえに、毎日違う様相を見せる我が子の成長がとても尊いものだと、理屈抜きでわかっているからなのだろう。
(おなかが、空いたのかしら)
 寝起きで重い身体をむくりと起こす。
 隣で寝ているエドガーを起こさないように慎重に動こうとしたが、元来人の気配に聡い夫は、目蓋を上げないまま「リディア」と小声で囁きかけてきた。
 さすがにエドガーも眠いのだろう。どうしたの、と問いかけてきながらも、なかなか目が開けられないらしい。
 リディアは彼に手を伸ばして、目蓋の上からそっと覆う。
「ちょっと様子を見てくるわ。……エドガーは寝てて?」
「……なにも、聞こえなかったと思うけど」
「うん、気のせいだったらすぐに戻ってくるわ」
 手を離すと、うっすらと開いた瞳が何だかもの言いたげにこちらを見ていた。
 リディアは笑って、寝ころんだままのエドガーの頭に、ちょん、とキスを落とす。
「だめよ。あなたは明日もお仕事なんだもの」
 眠っててね、と念を押して、ガウンを羽織って廊下に出る。
 耳を澄ましても何も聞こえない。けれど、確信めいたものを感じながら、リディアは急ぎ足で子どもがいる部屋へと向かった。
 そっと扉を開けると、乳母役のメイドが驚いた顔をして振り返った。
 その腕に我が子が抱かれているのを見て、来てよかったと胸をなで下ろす。
「まあ……奥さま。届くような泣き声ではなかったと思いましたのに」
「あたしも、気のせいかしらって思ったんだけど」
 おしゃぶりをくわえながら、まだぐずっている赤ちゃんを受け取って、ぎゅっと胸に抱き寄せてみる。
 首が据わってからはだいぶ抱きやすくなった。よしよしとあやしていると、小さな手がぎゅうっとガウンの端っこを掴んでくる。
 ミルクをあげなきゃいけないかしら、と思っていたが、みるみるうちに目蓋が落ちて、握りしめていた手のひらからも力が抜けた。
 そのまましばらく様子を見て、完全に寝入ったことを確認してから、そおっと乳母に子どもを預ける。
「遅くまでありがとう。朝までお願いします」
「おやまあ、とんでもないですわ。奥さまこそ早くお戻りにならないと、旦那さまが寂しがりますよ」
 にっこりと言われて、リディアも思わず笑ってしまう。
「誤解しないでね。あの人、口ではいろいろ言うけど、この子相手には全然やきもち妬かないのよ」
「そうですねえ、こんな天使のような寝顔を前にしては、いくら旦那さまでも嫉妬心なんてふっとんでしまいますよねえ」
 いくら旦那さまでも、のくだりに苦笑をしつつ、リディアは我が子の顔をもう一度まじまじと眺める。
 我が子ながら、本当に天使のように愛らしい。
 とてもか弱い存在なのに、どんな悪意も邪心もこの存在に敵うことはないだろうと思えてしまうから不思議だ。
 そういえば、と思いついて、乳母に向かっていたずらげな笑顔を向けた。
「この子を抱っこしてる時は、口げんかもないのよ」
 それはそれは、と笑う乳母に後のことを任せて、リディアは静かな足取りでエドガーの所に帰る。
 眠っているだろう、と思って、大きな扉を苦労して音を立てずに開けたのに、彼はベッドの上に座ってリディアを待ちかまえていた。
 数分前の寝ぼけた素振りはもうどこにもなくて、普段の眩しい笑顔でリディアを迎え入れる。
「リディア、お疲れさま」
「ちょっとあやしたらすぐ寝ちゃったわ。それより、寝ててって言ったのに」
 誰に気兼ねする必要もないというのに、なんとなく声をひそめてしまう。
 エドガーも、夜の静寂を壊さないような声音で話すものだから、自然に距離が詰められる。
「今日は乳母がついてるから戻ってくると思って。僕はいつも寝かせてもらってるんだから、たまにはいいだろ?」
「代わりにあたしは遅くまで寝かせてもらってるわ」
「せっかくふたりのベッドなのに、最近は一緒に寝てる時間が少ないよね」
 ねえリディア、と、声が甘くなったと思ったら、ぐっと引き寄せられて抱え込まれた。
「ちょ、ちょっと」
「乳母に任せきりにしないで頑張ってるリディアお母さまに、エドガーお父さまからのプレゼントがあるんだけど?」
 その言いようがおかしくて、思わずくすりと笑ってしまう。
「……なあに?」
 リディアを抱えたまま、ころんとエドガーが寝転がる。
 エドガーの上に完全に身体が乗ってしまい、とても落ち着かない体勢になってしまった。
「最近リディアはあの子の揺りかご役ばかりだから、今日は僕がきみの揺りかごになるよ」
 母親になって、大切なものを包み込む幸せを知ったリディアだけれど、そういえば最近は逆の体験をしていない。
 エドガーの腕に守られて、支えられる安心感は何にもまさる幸福だ。ぽんぽん、と背中と肩を撫でられて、知らないうちに張り詰めていたそこをゆっくりと緩める。
「……堅くて寝心地が悪いわ」
「安定感があっていいだろ?」
 そんなことを言いながらも、身体をねじってリディアをスプリングの効いたベッドの上へ下ろしてくれる。
 エドガーの腕に囲われる前に、自分からその懐に潜り込んで、リディアは甘えるように息をついた。
 リディアが距離を置かないから、エドガーも遠慮なく抱きしめてくる。
 なにを言われたわけでもないけれど、いつもに比べてひどく甘えた自分の動作に、無性に言い訳がしたくなった。
「赤ちゃんの力って、すごいわね」
「ん?」
「見栄とか、意地とか、とってもくだらないものに、思えて、くる……」
 言いながら、一気に目蓋が落ちてきた。
 意識が沈み込むほんの一瞬に、エドガーが幸せそうに笑んだのがわかった。
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