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引き続き、オリジナルのオリンポスのお話です。
ちびアイリーンが神山にやってきた直後、セツナたちと出会う前。

それはそうと、やっと「やることリスト」がコンプできました!
こなぎさんへのお礼の品のちびっ子詰め(<a href="http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=27657853" target="_blank">こちらからpixivに飛びます</a>)です^^* 2枚目はおまけのトワイラとか。
いやーもうちびっ子は可愛いですね! ね! ところどころにいるエドガーは完璧に私の胸中を再現しています。
そのうちホムペの方にもページ作ります^^*

あとはあれだ、おまけページの更新だ。うおお。


 下界にある大神殿。その祭壇の前で、幼いアイリーンは「じゃ、行くか」という兄の言葉にしっかりと頷いた。  『ポセイドン』を憑き神に持つ兄に抱き上げられて、ドキドキしながらその時を待つ。
 地面からわき上がるように起こった風に髪が揺らされるのを感じて、慌てて目をぎゅっと瞑った。
 砂か小石か、軽い感触が頬をかすめてくすぐったい。
 風を避けるように兄の首筋にしがみついていると、不意に空気が変わった気がした。
 不思議に思って顔を上げる。すると兄が、「敏感だなあ」と笑いながら、アイリーンを『神山』の土の上に立たせた。
 風が落ち着き、乱れた髪を適当に整えると、そこはすでに下界ではない景色が広がっている。
 木々の緑と建物の白が、明るい日差しの元で眩しいコントラストを描いている。  鮮やかな色合いに目を瞬かせていると、ぽん、と頭の上に手を置かれた。
「目に痛いくらい綺麗だろ? ここは不純物がないからなあ」
「不純物?」
「濁りって言えばわかるか? そういう薄汚れたものは全部下界に捨ててるんだ。まるで影なんて知りませんって感じだろ? アイリーン、ようこそ我らがユートピアへ」
 兄は相変わらずにこにことしているけれど、芝居がかった口調で言うふざけた台詞には、どこか棘があるような気がした。
 アイリーンが首を傾げていると、兄の頭にスコンと木の枝が当たった。
「『ポセイドン』、子どもになにを吹き込んでいる」
「リュオ……投げるなよ。リーンに当たったらどうしてくれるんだ」
 知らない人が来たと知り、アイリーンは慌てて兄の後ろに隠れる。が、そんな彼女を押し出して、兄はほら、と見知らぬ人物を指さした。
「ほらリーン、ご挨拶しろ。この人は『アポロン』のリュオ。俺の友達だよ」
「……兄さまが、よく言ってる?」
「そう。大親友さ!」
 にっかりと笑う兄に励まされて、アイリーンはおずおずとリュオを見上げる。
 とても綺麗な顔立ちをしている人だ。兄に比べると少し細身で、女の人だと紹介されたら、そのまま信じてしまいそうな線の細さがある。
 リュオはアイリーンの視線を受け止めると、しゃがんで目線の高さを合わせてくれた。
 どぎまぎしてなにも言えないでいるアイリーンに向かって微笑み、頭を柔らかく撫でてくれる。
「初めまして。大親友かどうかはさておき、きみの兄上とは親しくさせてもらってる。わたしのことはリュオと呼んでくれ。よければ名前を教えてもらえるかな?」
 うん、と頷いて、ちらりと兄を見上げる。微笑んで頷かれたのに励まされて、一歩だけ前に進み出た。
「アイリーンと言います。兄さまが、お世話になってます。あの、しばらくの間、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。―――可愛らしいな。お前の妹とは思えない」
「なに言ってんだ。恥ずかしがってもじもじしちゃうところなんか、可愛らしくてそっくりだろ?」
「どこがだ……」
 兄が同世代の、しかも友人だという人と話している姿はなんだか新鮮で、思わずまじまじと見てしまう。
 が、いくら兄の大親友だとしてもすぐには慣れなくて、リュオが視線を下げるタイミングで兄の後ろに思わず隠れる。  兄はそんなアイリーンに苦笑して、「今日だけだぞ」と抱き上げた。
「ちょっと人見知りが強いんだ。ちびどもと仲良くできるか心配だなあ」
「案外、セツナとならうまくやるんじゃないか。あの子は黙って気づかいができる子だ」
 そんなことを話しながら、兄とリュオは歩いていく。
 ゆっくりと歩く速度で流れていく景色を見ながら、アイリーンは兄が危惧するほどの不安も感じず、新しい世界に心を躍らせていた。
「兄さま、どこ行くの?」
「んー、そうだなあ。リーンはどこ行きたい?」
「兄さまがいつも、下界を眺めているところ、見てみたい」
「今日は天気いいから、大神殿の屋根までばっちり見えるぞ」
 本当? とはしゃいで振り向くと、こちらを眺めていたらしいリュオと目があった。
 彼は優しい笑顔をアイリーンに向けて、軽く手を広げてみせる。
「ようこそ、アイリーン。ここがきみにとっての理想郷となることを願うよ」
 母を亡くし、兄弟とも離ればなれで、ここ数ヶ月とても心細い思いをしていたアイリーンにとって、その微笑みはまさしく神からの救いに思えたのだった。
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