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お題ラストです! わーいコンプ!
最後、いろいろと迷いましたが、やはりここはエドリディで^^
ナイチンゲールの話とちょっと絡めてあります。あの短編好きです。
森の中の二人のやりとりを、ぜひとも高星さんの絵で見たかった……!

お題消化、お付き合いくださりありがとうございました^^*


+++



「エドガーって、純情だったのは10歳の頃までなんですって?」
 ぼんやりと穏やかな沈黙を楽しんでいたお茶の時間に、リディアが突然そんなことを言いだした。
 直前までどんな会話をしてたっけと反芻しながら、エドガーは首を傾げる。
「誰がそんなことを」
「ニコよ。そんな話をしたって、そういえばこの前言ってたの」
 ニコか。そういえば、そんな話をしたことがあるような気がする。
 リディアに振り回されて――正確にはリディアへの恋心に振り回されていた時に、思わずぽろっと愚痴ったのだった。
 まったく頼りにならない存在だと思うのに、ニコはときどき保護者のような立場になるから面白い。
「リディアは、なんで突然そんなこと?」
「ん、急に思い出しただけ」
 飲みきる前に冷めてきた紅茶をソーサーに置いて、リディアに向かって身を乗り出す。
 なあに、と視線で問うてくるリディアに、にっこりと微笑みかけた。
「リディアの純情は、僕が奪ってしまったのかな?」
「純情って、奪えるものなの?」
「ああ、間違えた。奪ったのは純情じゃなくて、じゅんけ」
 言い終える前にクッションが顔に向かって飛んできた。
 難なく受け止めて、危険な角度にまで傾いたリディアのカップもついでに取りあげる。
「ば、ばか! なにを言い出すのっ!」
「ごめんね、リディアはまだまだ純情だった」
 くすくすと笑って、かっかしているリディアを目を細めて眺める。
 キスがうまくなっても、生々しい男女の触れあいを知っても、なぜだかリディアは純情なままだ。
 欲というものを邪な目でとらえていないからかな、と最近思う。
 愛し合うふたりが触れあって、心地よくなること。それは気恥ずかしさを伴うけれど、ごく自然なことで、なんら背徳的なことではないのだろう。
 が、行為は受け入れてくれても、こうしてからかうのは彼女にとって受け入れがたいものらしい。
 それでも、エドガーのこうした言動にもだいぶ慣れてきたと思う。
 恥ずかしすぎてパニックになって平手が飛んでくることもなくなったし、ひとつ深呼吸したリディアはもう平静を取り戻している。
 彼女は呆れたように息をついて、ソファの背もたれに華奢な身を埋めた。
「純情な時期が10歳までだったなんて、とんでもない子どもだったのね……」
「そうかな。可愛らしい、って評判だったよ」
「そりゃ、外見はそうだったと思うけど……」
 金緑の瞳が泳いで、ちょっと首を傾げた後で、エドガーの顔をじっと見た。
 大きな瞳がきらきらと輝いているように見えて、その美しさに思わず心が躍る。
「キスしていい?」
「なんでそうなるのよ」
「だって、きみが見つめてくれるから」
 頬を染めて軽く引き気味になるリディアに構わず、席を彼女の隣に移して、おいしそうに色づいた頬にキスを落とす。
 唇も……と思ったが、そこはうまくかわされてしまった。
「純情だった頃のエドガーを見てみたいわ、って思っただけよ」
 可愛かったんでしょうね、と頬を緩ませるリディアの方が、よほど可愛いと思う。
 そういえば、エドガーはリディアの子どもの頃の姿を見たことがあるのだ。
 ナイチンゲールの歌声が響くあるじの森の中で、今よりもっと初心だったリディアは、10歳そこそこの子どもの姿をしていた。
 その姿を思い出しながら、「リディアは昔から可愛かったんだよね」と言うと、彼女は不思議そうに目を瞬かせる。
「ほら、ナイチンゲールの森で」
「あ……そ、そうね。あの時は。……今はもっと、成長してると、思うんだけど」
 もごもごと言うリディアを引き寄せて、額にそっと唇を当てる。そろり、と視線を上げた彼女をとらえて、睫毛に軽くキスを落とした。
「おまじないが効いたかな」
「……もう」
 照れくささを隠すために頬を膨らませながら、そっとエドガーに寄り添ってくるリディアの恋心は確かに育っているのだと思う。
 そのことを幸福に思いながら、自分はどうなのかな、と思いを巡らせた。
 リディアの隣は心地がいい。それは変わらないけれど、あの頃の自分は、彼女の一挙一動にこんなにも胸を高鳴らせていただろうか。
「……ナイチンゲールの森に行けば、お目にかかれるかもしれないな」
「なにに?」
「純情だった時の僕」
「まさか」
 一言で一蹴されて、ひどいなあと笑う。
 いつまでもリディアに恋をしてる自分は、10歳とはいかなくても、なかなかに純情な青少年だと思うのだけれど。
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コメント
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お題コンプリートおめでとうございます\(^o^)/
おめでとうございます!
どれもとってもおもしろくて、毎回楽しみにしてました(^o^)ナイチンゲールの話、懐かしいです!
私もけっこう好きな話だったので、今回こうして創作して下さったのが読めて嬉しいです、ありがとうございます(^^)まつげにキス…‼エドガーはやっぱりリディアと出会って純情になったんですよね!お互いぎお互いに純情っていいですね( *`ω´)
次の更新も楽しみにしてます!
りんご 2012/10/08(Mon)13:00:11 編集
ありがとうございます!
気づいたらコンプからだいぶ時間が経ってしまいましたが……お祝いのお言葉ありがとうございますv
ナイチンゲールの森、素敵だなあと思うのですよ! 始めて読んだ時はエドガーがおっちゃん姿で出るのでは……とどきどきしましたが、さすがコバルト、そんなことはなかったです(笑
エドガーはどんどん無邪気な面が出てきてますよね! リディアと一緒になって、角が取れてきたエドガーを見るとほっこりします(´v`*)
コメントをありがとうございましたv
【2012/11/11 11:04】
無題
お題終了おめでとうございます。
エドガーの純情…13歳の記憶しかないのに記憶が消える前のの知識が
どこかに残ってるとはいえ、どう考えても純情とは遠かったみたいですよね
実際ほんとに10歳だったのか、謎です。

でもリディアに純粋な恋。
完結後に子供ができてもずっと一生続きそうでいい夫婦ですよね。

次回の更新も楽しみにしてます
手書きの感想もここでいいのでしょうか
リディアがなにやら小さくなったみたいですけど
エドガーさん寝直すことなにのに、その後が気になります(笑)
natuki 2012/10/08(Mon)23:22:02 編集
Re:無題
お返事遅れてすみません!
エドガーの女好きは天性のものですよね(笑 知識欲も旺盛だったでしょうから、かなりませた子どもだったのでしょう……こわいこわい(´ワ`)
リディア相手には素の自分でぶつかるしかなくて、でもそれを幸せだと思っているエドガーがいるといいなあと思いながら書いております! ずっとお互いに恋してる夫婦でいて欲しいですv

手ブロの感想もありがとうございます! ちっさくなったリディアシリーズはあと一回で終わる予定なので、のんびり待っていてくださると嬉しいですv
コメントをありがとうございましたv
【2012/11/11 11:07】
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