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夏用の薄っぺらい上掛けを使っていたら、朝晩の冷え込みにやられたようで熱を出しました^q^
たいした熱じゃないけど、勉強するのはままならない……ということで、脳内で展開された風邪っぴきエドリディを投下です。

リディア可愛い。


 

+++



 一日の埃を落として部屋に入ったら、すでに夜着の姿になったリディアが、暖炉の前のソファにちょこんと座っていた。
 彼女はエドガーの姿を認めると編み物の手を止めて、ふわりと相好を崩す。
「エドガー」
「お待たせ、僕のリディア。今度はなにを編んでるの?」
「モチーフ編みの練習をしてるの。クリスマスに、ケリーになにか贈ろうかと思って」
 一見してエドガー用ではないな、とわかったが、贈る相手がケリーならまあいいかと思う。
 僕にはないの? と首を傾げてみせると、リディアはちょっと困ったように眉を下げた。
「だって……あんまりうまくないんだもの。膝掛けくらいなら編めるけど、そう何枚もいらないでしょ?」
「リディアの手作りが欲しいんだ。ベストとかは? それなら毎日着ていられる」
「そういうのは、もうちょっと練習してから……」
「今でも十分すごいと思うけど」
 これは掛け値なしの本気の言葉だ。リディアがちょいちょいと編み棒を動かすだけで、毛糸が縒り合わさって複雑な模様になっていく。
 魔法みたいだな、と素直に感じるから、リディアがどうしてそこまで渋るのかがわからない。
「だって。……あなたには、こんなよれよれのもの着せられないわ」
 頬を染めて俯いて、ぼそぼそというリディアがとても可愛い。
 その可愛い顔を隠そうとするキャラメル色の髪をかき上げて、あらわになった耳にキスをする。
「きみが想いを込めて編んでくれるもの以上に、僕にふさわしいものはないよ」
 愛妻家冥利に尽きるってものだろ?
 にっこり笑うと、もう、とリディアも微笑んだ。その優しい瞳が嬉しくて、エドガーはまたキスを落とす。
 くすぐったそうに笑うリディアが、そっと額を肩に押し当ててきた。
「似合いそうなパターン、探してみるわ」
「楽しみにしてる」
 緩く肩を抱いて、温もりに浸る。
 珍しくリディアの方からぴったりとくっついてきて、おや、と見下ろす。
「それにしても、今日はちょっと冷えるわね」
 照れ隠しだろうか、と思ったが、実際リディアは寒そうに肩を竦めている。
「すっかり秋だからね。昼間はそれなりに暖かかったけど」
「そう? 日陰にいたからかしら、今日はなんだかずっと寒くて。……薪が足りてないわけでもなさそうなのに」
 言って、目の前の暖炉に目をやるリディアに、エドガーは目をやる。
 改めて寄り添うように肩を抱き直しながら、「今も寒いの?」と尋ねる。
 こくん、と頷くリディアに、ちょっと眉をひそめた。
 エドガーにとっては部屋の温度は暖かく、暖炉の前に陣取っていては暑いくらいだ。
 女性は確かに、男性よりは寒がりなことが多いけれど。
「リディア、こっち見て」
「え?」
 顔を上げたリディアの額に、額を寄せる。そうしながら間近で瞳を覗き込むと、潤んで、うっすらと充血していた。
 測った熱は、予想通りに高かった。
「熱があるじゃないか」
「ええ?」
 自分の手のひらで頬や額に手をやりながら、リディアは首を傾げている。
 手も火照っているのだから、その手で測ってもわかりにくいだろう。華奢な手をとって、自分の頬にあてがうと、体温の違いが明確になった。
「エドガー、冷たいわ」
「きみが熱いんだよ」
 そうかしら、とリディアはまだ首を傾げている。思わずため息をつくと、彼女は叱られた子どものように肩を落とした。
 その様子に苦笑して、熱い額に口づけを落とす。
「ケリーを呼ぶから待ってて。今日の編み物はもう終わりだよ」
「ええ……」
 ベルを鳴らすと、レイヴンとケリーが競うようにやってきた。ケリーにリディアの熱のことを告げると、彼女は顔を青くする。
「リディアは自分のことには疎いんだから、きみがしっかり見ていてくれないと困るよ」
「も、申し訳ありません!」
 平身低頭する侍女に、リディアがおろおろと手を伸ばす。
「やだ、ケリーのせいじゃないわ。あたしがしっかりしてないのがいけないんだから……エドガー、ケリーを叱らないで」
「僕に叱らせたくなかったら、今日はゆっくり休むこと。明日の仕事も休むこと。約束できる?」
 大した熱じゃないのに、と言いたげなリディアだったが、エドガーがじっと見つめていると折れたように息をついた。
「わかったわ。明日はゆっくりする」
「ん。じゃあ、今日はもうお休み」
 チェンバースイートのベッドは調子の悪いリディアに譲って、自分は他のところで寝よう。
 いつもよりも数段軽いお休みのキスを贈って、レイヴンにベッドを整えるように言おうと振り向いたところで、服をくいっと引っ張られた。
「どこに行くの?」
 驚いた顔をしているリディアに、エドガーの方が驚く。なんとなく頬や頭を撫でながら、「どこの部屋がいいかな」とレイヴンに振る。
 答えようとした従者を遮って、ますます慌てた顔になったリディアが、服を握る手に力を入れた。
「一緒に寝ないの?」
「……一緒に寝たいの?」
 こんな反応をされるとは思わなかったから、素直に首を傾げると、リディアは一瞬怯んで、頬を赤く染めた。
 あ、可愛い。
 今日は襲うわけにはいかないんだから、紳士的にベッドを分けようとしているエドガーには、ちょっと刺激が強いかもしれない。
「だ、だって……」
 リディアがなんだかもじもじしている。可愛すぎて、見つめていたら反射的に手を出してしまいそうだから、少し視線を逸らそうとした。
 が、逸らす前に、金緑の瞳にとらえられてしまう。
「寒いし……ひとりだと広くて、寂しいわ」
 多分リディアは、自分の台詞がエドガーにどういう影響を及ぼすか、まったくわかっていない。
 わかっていないということがわかるから、病人のリディアに対して我欲のままに突っ走ることが憚られて、ちょっと硬直してしまった。
「リ、リディアさま!」
 助け船を出したのはケリーだ。エドガーとリディアの間にはいるように身を乗り出して、一生懸命にリディアを説得しにかかる。
「お加減が悪いんですから、そんなことを旦那さまに言っては悪化してしまいます……じゃ、じゃなくて。寂しいかもしれませんが! 旦那さまにうつしでもしたら、後悔なさるのはリディアさまでしょう?」
 いろいろと言葉を選ぶ努力をするケリーだが、リディアにはあまり通じてなさそうだ。
 きょとんとする瞳が、少しとろんとしてきている。早く暖かくして寝床に入るべきではないかと、心配になる。
 ケリーが一生懸命にリディアを説得している背後で、ふたりに気づかれないように、長く長く息をついた。
 気合いを入れて、欲望をぐっと抑え込む。
「リディア、寂しいなら眠るまで傍にいてあげるよ」
「エドガー」
「でもやっぱり、ひとりで眠った方がゆっくり眠れると思うから、そこは我慢してくれないかな。明日は朝から一緒にいるから」
 ね、と宥めるために頬を撫でると、可愛いリディアは渋々ながら頷いてくれた。
 そのまま、ぽすん、とエドガーの胸に凭れこんでくる。その熱さに、逆に冷静になれたエドガーは、リディアを抱き上げてケリーたちの方を振り返った。
「一番近い部屋を整えておいてくれ」
「かしこまりました」
 ハラハラと主人に視線を送るケリーを尻目に、二人の寝室への扉をくぐる。
 自分の理性が保っている間に眠ってくれればいいけれど、と燻りそうになる熱を吐き出すように、小さく息をついた。
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無題
いいですね(´ω`〃!!最近急に寒くなって秋らしくなりましたもんね,,,!!
リディアが甘えてるととっても可愛いです!!
エドガーも我慢ナイスです、幸せな二人万歳\(^o^)/
りんご 2012/09/27(Thu)21:24:48 編集
Re:無題
わーありがとうございます! これの前の記事にもコメントいただいておりました……気づくのが遅くてたいへん申し訳ないです、今読みました! ありがとうございます!
もう、原作でエドガーに甘えるリディアがツボでツボで、どうしてもそういうシーンばかり書いてしまいます(笑
楽しんで頂けてるなら嬉しいですーv らぶらぶエドリディ、大好きです(ぐっ
コメントをありがとうございましたv
【2012/10/04 23:32】
無題
お体はもう大丈夫ですか?

悪化してしまいます…まったくですよねケリー(笑)
リディア、酔っぱらったり熱があったりすると可愛さ倍増になりますね。新刊の、ぼんやりさんなリディアも可愛かったですよね。
スイ 2012/09/28(Fri)22:23:03 編集
Re:無題
体調のご心配もありがとうございます……! 薬飲んでぼけーっとしてましたら、自然に下がりました^^*
原作でのケリーの失言具合が楽しくなってきたので、こちらでも頑張ってもらいました(笑
リディアはちょっと理性が緩んでるくらいが可愛いですよね……! エドガーの理性が緩んだら大変ですので、旦那には引き締めてもらっております(´v`)
コメントをありがとうございましたv
【2012/10/04 23:35】
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