[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
メールくださったHさま、ありがとうございました!
あの放置状態で急に消えてたら、閉鎖したって思いますよね……諦めずに見つけてくださって感謝です><v
そろそろブログを本格的にいじるか、新しいサーバーにホムペを移すかをしなくちゃいけませんねえ。
+++
禁断の果実は、蜜の味?
(そんな甘いものじゃないだろう)
	 オイルグリーンの檻は砕け散った。
	 押し込められていた少年は、禍々しい力の固まりだ。
	 解放されたそれを必死の思いで飲み込んだ瞬間、腐食が染みのように広がっていく心地がした。
	 ―――血なまぐさい予感しかしない。
	 荒々しく、ドス黒い猛りがエドガーを支配しようとする。
	 それをなんとか収めたのは、彼が愛してやまない、一人の女性の温かさだ。
	 出先から返る馬車の中で、エドガーはずっとリディアの手を握っている。
	 必要以上に密着することも、口づけを乞うことも、甘い言葉で口説くこともない。
	 車輪が地面と擦れる音と、二人分の息づかいが微かに聞こえるだけで、馬車の中は静かだった。
	 物思うように伏せがちにしていた目をそっと横に向けると、リディアは軽く目をつむっている。
	 眠っているわけではないだろう。けれど退屈しているわけでもないということが、微かに綻んだ口元から伺える。
	 何かに耳を澄ませているようだ。移動する馬車の中だけれど、妖精のお喋りでも聞こえるのだろうか。
	 彼女の目蓋の裏には、きっと優しい情景が浮かんでいるのだろう。
	 想像してみようとエドガーも目蓋を下ろすけれど、浮かんできたものは、安らぎと呼ぶにはほど遠い。
	 今日は、岬のあたりを散歩した。地面が途切れた先に広がる海は壮観で、リディアは目を輝かせていたものだ。
	 エドガーも、綺麗だと感じたかもしれない。これがもう少し早い時間のことであったなら。
	 今日の夕暮れは見事だった。今も目を閉じれば、脳裏にまざまざと思い出せるほど。
	 禍々しいほどに赤い、圧倒的な光景だった。
	「綺麗ね」
	 目を輝かせた彼女が、上気した顔でエドガーを見つめてくる。彼はそれに、穏やかな笑みを返した。
	「そうだね、まるで」
	 血の海だ。
	「エドガー? 眠いの?」
	「そんなことないよ」
	「でも、帰りの馬車から少し変だわ。疲れちゃった?」
	 ディナーも終わり、少しラフな格好でくつろぐエドガーに、コーヒーを渡したリディアはそんなことを言ってきた。
	 よく見ている、とエドガーはそっと苦笑する。
	 ソファの上、隣に並んで座ったリディアは、逃すまいとでも言いたげに、一生懸命な目を向けてきた。
	 血の海のイメージなんて、そこに積み上げられ築かれた屍の陸地のイメージなんて、リディアには欠片も漏らしたくない。
	 けれど適当には誤魔化せない。エドガーは薄く微笑みながら紅茶に口をつけ、どうしたものかと思案する。
	「エドガー」
	 咎めるように、真綿でくるむように、リディアがエドガーの名を呼ぶ。
	 視線を向けて、彼女の髪が暖炉に照らされ、真赤く染まっているのを見る。
	 血の海に浮かぶ死体の髪も、元の色がわからないほどに、こんなふうに染められていた。
	 焦燥に駆られて、彼女を炎の光から庇うように抱きかかえた。
	 エドガーの影にすっぽりおさまり、キャラメル色がもとの柔らかさを取り戻す。
	 もぞもぞと動こうとするリディアを、きゅっと抱きしめて息をついた。
	「僕が堕ちても、きみは追いかけちゃいけないよ」
	 誤魔化す余裕もなく口をついて出た言葉に、リディアの肩が強張る。
	 ぐい、と力を込めて身体を離された。
	「エドガーは、堕ちたりなんかしないわ」
	「……うん」
	 強い瞳で彼を睨むリディアを愛おしく思う。
	 瞳が自然に和んでいく。引き寄せられるままに唇を寄せた。
	「そうだね。だから、これは万が一の話」
	 終末の予感は常にある。死ぬ時は一緒と言ってくれたリディアだけれど、自分の破滅に彼女を巻き込みたくなんてない。
	 微笑むエドガーの陰を、リディアは敏感に感じ取ったようだ。
	 泣きそうに顔が歪む。それに心が騒いだ瞬間、柔らかな二の腕がエドガーの首に回り、唇が慣れた感触に塞がれた。
	「そんな話、聞きたくない」
	 リディアは怒っているようだった。
	 返答する間もなく、また距離がゼロになる。
	 エドガーは二、三度瞬きをして、感じる重さや感触を実感すると、目を伏せてリディアの頭と腰を両腕で支える。
	 そのままソファに後ろ向きに倒れると、リディアはさすがに焦ったように身体を離そうとしたが、彼がそれを許すはずもない。
	 身体が合わさり、触れている部分から脈動が直に響いてくる。
	 網膜に焼き付いたように離れないのは、圧倒するように広がる赤。
	 柔らかな唇を思うさまに貪りながら、エドガーはふと考える。
	 終末ではないのかもしれない。その先にあるのが暗闇でなく、真昼の鮮やかさであるのなら。
その節はご丁寧にありがとうございました。その後DLサイトのほうも制覇させていただきました。
夜深さまの書かれるエドリディ、原作沿いは勿論どんなパターンのパラレルでも全部、それぞれにキャラが立っていながらエドガーであり、リディアであり、ふたりの間に確かな絆があって、大好きです。
本、愛読しすぎてカバーがボロボロになってきました。(カバーつけといて良かった)
サイトがなくなった時は数日焦りましたが、こちらですぐに閉鎖ではないと分かってほんとにほっとしました。あれだけ読み応えのあるサイトですから、再アップされるのはかなり大変かと思います。でもあまりに勿体ないのでいつかまた読ませていただきたいな~とファンとしては願っています。夜深様にご負担のないように。
本サイトが消えちゃったのは残念ですが、blogでのお題消化楽しく拝見しています。
このお話も、すごく好きです。
こんなにも彼を愛して寄り添えるリディアがいれば、きっと大丈夫。ふたりの自然な愛情が、PCのモニターにまで滲んできてる気がしますw
(すみません、ちょっとだけ気になったのですがコーヒーと紅茶、入れ替わってませんでしょうか)
夜深様の伯妖、大好きです。今後のご活躍も楽しみにさせていただいてます。
また遊びに来させてください。
改めまして、通販のご利用ありがとうございました! 紙媒体も電子媒体も見てくださったということで、嬉しい限りですv
どのお話もかなりノリノリな状態で一生懸命創らせていただいたので、カバーがぼろぼろになるまで読んでくださっているとは、本当にありがたいことです。書いた本人ですらそんなには読み込めていないので、粗が出てくるんではないかとちょっと心配ですが(笑
粗といえば、この記事のコーヒーと紅茶、直すのをすっかり忘れていました;; ご指摘ありがとうございます><
たまにはコーヒーでも飲ませるか! と思ったのですが、手が勝手に内慣れた単語を打っていたようです^^;
ホムペはおかげさまで差異アップロードを終えたのですが、広告の関係でデザインが崩れてしまっているので、必要かなと思った部屋だけリンクを貼らせていただいています^^*
またどうぞ、時間つぶしに困った時などに活用してやってください><
コメントをありがとうございましたv
| 10 | 2025/11 | 12 | 
| S | M | T | W | T | F | S | 
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ||||||
| 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 
| 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 
| 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 
| 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 
| 30 | 
 
	
