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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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母性の前に存分に退行すればいいと思うの。
「情熱の花~」を踏まえています。


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会話の途中で、くらり、と目眩がした。
表情を一瞬強張らせるだけにとどめ、何もなかったように振る舞おうとしたエドガーだったが、淡々とした声音に名前を呼ばれて思わず苦笑する。
「どうした、レイヴン」
「いえ……」
じっと見つめてくる目は、エドガーの身に以上がないか探っているようだ。
プリンスに乗っ取られてしまうのではないかという危惧ではなく、単純に彼の体調を気遣っている様子が感じ取れて、口元を綻ばせる。
「エドガー、従者に止められるほど酒癖が悪くなったのか?」
ロタがからかうと、反論したのはレイヴンだった。
「エドガーさまの酒癖は悪くありません。ただ、奥さまに対しては情熱的になりすぎるきらいがあります」
「あんまり迫ってリディアを困らせたら困る、と。そういうことか」
さも楽しげに、どこからどう見ても淑女には見えない所作で大笑いするロタは、もう相当酔っぱらっている。
エドガーもちびちびと酒を舐めてはいたが、この後リディアとふたりきりになるかと思うと、酔っぱらうのは憚られた。
ただでさえ、組織から離れたここにはプリンスの凶暴性を発散させるものがないのだから、自分でしっかりと理性を引き止めて置かなくてはならない。
ロタに肩を組まれて狼狽えているポールを見て、エドガーは笑う。肩を揺らした途端に、またくらりと目眩がした。
「エドガーさま、リディアさんをお呼びします」
「彼女は今、湯浴みの真っ最中だよ。まさか覗きに行くつもりかい?」
ちろり、と睨むと、そんなことは、と少し慌てた様子になる。それがおかしくて、歪みそうになる視線に気をとられながらも、エドガーはくすくすと笑った。
「でもそうだね、待ち遠しいのは確かだ。僕は寝室で待ってるって、リディアに伝えてくれ」
「かしこまりました」
優雅な所作を意識しながら、ふらつきそうになる身体を気力で支える。
リディアが触れてくれさえすれば、こんな目眩はすぐ収まると思うのに。
「なんだよ、もう引きこもるのか?」
胡乱な顔をするロタに適当に惚気ようかとも思ったが、顔を赤くしているポールと目が合うと、エドガーはにんまりと笑った。
「野暮な真似はしたくないからね」
ぼんっと、どこからか火が噴いたようだ。
伯爵! と声を裏返らせる友人にひらひらと手を振り、そのまま気力だけで寝室まで進んでいった。



「エドガー?」
柔らかくて、甘い声。
慕わしい気配が彼の意識をくすぐって、エドガーは重くなっていた目蓋をゆっくり押し上げた。
ぐるぐると、頭の中で喚いている声がする。
救いを求めるように手を伸ばすと、彼女はすぐさまそれに応えてくれた。
ぴりっと、痛みが走る。それでも手を離そうとせず、ますます強く握ってくれるリディアの温もりに、エドガーはひとつ息をついた。
「ごめん、痛い?」
「ううん。おさまったわ」
ベッドに倒れ込んでいるエドガーを覗き込むリディアは気遣わしげな瞳をしている。
頭の中の声はやまない。酒を飲むべきじゃなかったかなと苦く思いながら、リディアに微笑んで欲しくて、笑みを作る。
「少し酔った」
「たいして飲んでないって聞いたわ」
「うん。品行方正に過ごしてたからね、だいぶ弱くなったみたいだ」
「……エドガー、顔色が」
やっぱりリディアは誤魔化せないなと思いながら、エドガーは疲労のままに目を閉じる。
握ったままの手のひらから彼女の温度を感じ、空いた方の手で髪や頬を撫でてくれている心地よさに集中すると、声はどんどん遠のいていった。
「エドガー」
もう大丈夫、と言おうとして目を開けると、何やらリディアが恥ずかしげにしていた。
「あの、……来る?」
ぽん、と、躊躇いがちな所作で示された先は、肌触りのいい寝間着に包まれた太ももだ。
「いいの?」
「……落ち着くなら」
プリンスの気配は遠のいたけれど、それを今口に出すのはそれこそ野暮だろう。
じゃあ遠慮無く、と柔らかな太ももに頭を乗せ、甘えるように細腰に腕を回す。
どこもかしこも頼りなげに細いのに、甘えさせてくれる肢体はこんなにも柔らかで、安心する。
「今度は、僕が枕になってあげるからね」
「え、別にそんな……」
口ごもるリディアは、自分から提案した今の状況に大いに照れているらしい。
エドガーは屈託なく微笑んで、繋がった指先にキスを落とした。
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はじめまして
一樹夜深様

はじめまして。悟東と申します。
去年あたりから、HP・ブログともども拝見させていただいておりました。伯爵と妖精にハマったのも去年ぐらいでしょうか。ずっと前からファンです!と言いたいくらい、今ではすっかり虜になってしまいました。
一樹夜深様の書かれるエドリディは本当に素敵です。原作から離れず、かつ原作より甘い世界で…。まるで本編を読んでいるような気分で、とても楽しく読ませていただきました。
これからも更新を楽しみにしています。
日々暑くなってまいりましたが、体調崩されませぬようお気を付けください。

悟東
悟東 2011/06/16(Thu)00:07:13 編集
はじめまして!
丁寧なコメントをくださってありがとうございます! なかなかお返事ができず、申し訳ありませんでした。。
好きなものを好きなように書いているのですが、その中にお気に入りを見つけていただけているようで嬉しいですvやはり原作が大好きでしている二次創作ですので、「原作の雰囲気を壊すことなく」と感じていただけるのは、とても嬉しいですv
亀更新にもほどがありますが、またちまちまと創作を続けていきたいと思います。
どんどん不精者になっていっている管理人ですが(…)、また気が向いた時に覗いていただければと思います^^*

コメントをありがとうございましたv
【2011/07/28 19:08】
はじめまして
はじめましてこんにちわ。
サイトを発見させていただいて3日目で削除になってしまいました(/_;)
負けるものかと検索をしてここを発見しました。
私みたいにここにたどり着ける人もいっぱいいるはずです。
運営等大変だろうけど負けずにがんばってください。
影ながら(本当に影ながらだけど)応援します!!
ちな 2011/07/29(Fri)21:33:29 編集
はじめまして^^
サイト発見3日目とは……! 消える前に見つけていただけて幸運でした><
負けずに検索かけていただいて、本当にありがとうございます! 絵や漫画はpixivの方に(全部ではないですが)あげてあったりもしますので、時間の暇つぶしに困ったら探してやってください(´ω`)
サーバーを移転するようなことになりましたら、またこちらでお知らせさせていただきますね。
コメントをありがとうございましたv
【2011/07/31 01:37】
こんばんわ
はじめまして。
先月にこちらのサイトを発見してから頻繁に通わせていただいてます☆
原作に近い雰囲気や本物の作家さんみたいな言葉の選び方が大好きです!
更新お忙しい中だと思いますが頑張ってください!!
これからの作品も楽しみにしてます^^☆
はるな 2011/08/17(Wed)00:20:43 編集
ありがとうございますv
初めまして、辺境ブログにお越しくださってありがとうございます!
なかなか更新がままならない感じですが、時間がある時にぽつぽつといじっていきたいと思います><
気が向いた時に、暇つぶしに使っていただけますと嬉しいですv
コメントをありがとうございましたv
【2011/08/23 21:30】
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