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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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ここ最近、就職活動のような転職活動のようなことをしております、こんにちは。
頑張ることを続けられるというのはとても大切な能力なんだなあとしみじみ思いつつ。久しぶりに息抜きをする余裕ができました(´v`)

お題ラスト3つです! 多分幸せに伯爵夫婦をしていた時のお話です^^


+++


 エドガーはプライベートルームにいた。
 くつろぐ時の定位置である暖炉の前のソファに腰を落ち着けて、完全に背もたれに身体を預けながら、なんだか妙な感じだなあと独りごちた。
 膝の上にはリディアがいる。
 エドガーが彼女の不意をついては抱き上げてこの体勢に持って行くことは珍しいことではない。けれど、いつもと違うのは、自分が促したわけでもないのに細腕がエドガーの首筋にまとわりついているということだ。
 おまけに、先ほどから無抵抗なエドガーの耳元で、可愛らしいリップ音が途切れることなく続いている。
 耳に、頬に、こめかみに、顔を赤くしてにこにこと笑み崩れたリディアが、楽しそうに唇で触れていく。
 エドガーとしては諸手を広げて歓迎したいシチュエーションだが、彼女が酔っぱらっているというのが難点だ。
「ねえ、リディア」
「こっち向いちゃ、だめ」
 向き合って、もっと他の所にもキスしてほしいな、と口にする暇もなく、子どものように顔をしかめたリディアが手のひらでエドガーの頬を押してくる。
 まったく自分の思うとおりに動いてくれない彼女に、苦笑を交えて小さく息をつく。
 むしろ、まったく自分の思うとおりに動けない状況に、と言った方がいいかもしれない。
 エドガーが自発的に(主にリディアを可愛がるために)動こうとすると、可愛いにこにこ笑顔が一瞬にしてしかめられてしまうのだ。そうして誘うような甘い声音で、「だめ」と彼を拒絶する。
 まるで体のいいオモチャだな、と内心で笑う。決して悪い気分ではない。むしろ新鮮な状況が楽しくて、エドガーはまな板の上にいる状態を甘受している。
 でも、リディアはなにがしたいのだろう。
 酔っぱらいの行動に整合性が欠けているのはある種で当たり前のことかもしれないけれど、理性の箍が外れて、滅多に見せない本音の部分が露呈しているというとらえ方もできる。
 エドガーの膝の上に乗り、遠慮なく彼に体重をかけ、顔中(ただし、唇は除く)にバードキスを落としていくリディア。
 甘えているというよりは、そうすることを楽しんでいるように見える。
 顔を動かさないようにして、視線だけでちらりとリディアを伺い見る。至近距離にある彼女の相好は、これ以上ないくらいに輝いている。
 確実に楽しんでいる。何を? エドガーにキスを贈って、それだけでなぜこんなにも嬉しそうなんだろう。
 エドガーもリディアにキスをするのは大好きだ。けれどそれは、行為そのものを楽しんでいるというよりも、キスを仕掛けた時のリディアの反応を楽しんでいると言った方がいい。
 けれど、リディアはエドガーの反応を楽しんでいるわけではなさそうだ。そもそも、エドガーが反応しようとすると、彼女は怒る。
 なんだろう、とつらつら考えながら、彼は目蓋を下ろした。リディアの温もりと、軽やかなリップ音だけが知覚される。なんとも心地がいい贅沢な時間だと思う。
「……エドガー?」
 頬にかかっていた息づかいが遠のいて、寝ちゃったの? と声がする。
 きっと。首をことんと傾げている。幼子のように、無邪気な仕種で。
 まったく眠くはなかったけれど、エドガーは目を開けなかった。リディアはどうするかな、と楽しみに思いながら、眠ったふりをする。
 閉ざした視界の向こうで、リディアがエドガーを伺っている気配がする。
 キスはやんで、滑らかな手のひらが彼の頬に伸ばされた。むにむにと軽く押されて、それでも反応しないでいると、そっと頬を撫でられる。
 起きて、と拗ねた声で呼ぶのかなと思っていた。そうでないリディアの反応が、ついさっきまでの幼い反応と乖離しているようで意外だった。
 エドガーの頬を慈しむように撫でていた手のひらが、今度は髪へと伸ばされる。細い金糸の間を華奢な指先が何度か通って、そうして最後に、額に柔らかなキスが落とされた。
「いつも、ありがと……」
 密やかな囁きが落ちて、リディアが身じろぎする。離れていってしまうのかと目を開こうとしたが、彼女はエドガーの膝の上で身を縮めて、頭を胸に凭れかけてきた。
 空気が微かに、本当に微かに震わされて、エドガーの鼓膜にあたり、「だいすき」という音を響かせる。
 その言葉が不意打ちすぎて、エドガーは珍しいことに思考を一瞬停止させる。
 身体が硬直した代わりに、鼓動が爆発的に加速した。
 自分でも内側から強く叩かれている感じがわかるほどだ。胸に片耳をあてて凭れかかっていたリディアには、もっと明瞭に聞こえただろう。
 エドガーが見下ろす先で、リディアがぱちりと目蓋を開き、まじまじとエドガーの胸元を見た。そうして不思議そうに瞬いた瞳が彼の表情をとらえる前に、焦点が合わないほど近づいて、柔らかな唇を覆ってしまう。
 多分赤くなっている顔を見られまいとして、エドガーは一心にリディアの唇を貪る。
 どんな妖艶な仕種より、彼女の一途な仕種がたまらないと、熱で沸きかけた頭の隅でそう思った。
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