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人間カイロが恋しい季節です。





ふと肌寒さを感じて、意識が浮上した。
ぼんやりと目蓋を上げて見た景色は真っ暗で、まだまだ朝は遠い時間帯なのだと知る。
リディアは無意識の動きで毛布を引き上げて、そこで自分がなにも着ていないことを思い出した。
次いで、珍しくエドガーの腕がリディアを囲っていないことに気づく。
少しずつ覚醒してきた頭で、ゆっくりと瞬きをする。真っ先に視界に飛び込んできたのはエドガー肩胛骨だ。
エドガーが背中を向けて眠るなんて、珍しい。
なんとなく寂しさを覚えて手を伸ばす。触れそうになったところで、我に返って手を引っ込めた。
まずは、服を着よう。
ひとり顔を火照らせながら、リディアはなるべくベッドを揺らさないように身を起こす。
闇に目を凝らすと、足下にそれらしい固まりが見えた。腕をうんと伸ばして、指先に引っかかったそれをたぐり寄せる。
ガウンだ。ナイトウェアが目の届くところにないかと探したけれど、見つからなかったので、ガウンだけでも羽織ることにした。
素肌に羽織ると、少しごわごわする。けれど冷えた肩がじわじわと温まる感覚に満足して、リディアはまたゆっくりと横になった。
柔らかなベッドに身をゆだねると、すぐに眠気が襲ってくる。リディアはぼんやりとエドガーの背中を眺めながら、目蓋が自然に落ちてくるに任せた。
呼吸音が部屋の静けさに吸い込まれていく。
リディアは身じろぎして、エドガーの背中にすり寄った。
深い呼吸は乱れない。こんなに近くにいても目覚めないエドガーに、気を許してくれている証があるような気がして、リディアはふと微笑む。
そ、と、手を伸ばした。背中から腹に、細い腕を絡める。
感じる体温にどきどきする。しばらくは眠るどころじゃなくなってしまったリディアだけれど、エドガーに起きる気配がまったくないことがわかると、じきに眠りに落ちていった。





鳥のさえずる音が聞こえて、エドガーはふと目が覚めた。
よほどのことでない限り、朝一番で鳴き始める小鳥たちの声が聞こえると、一度は目が覚めてしまう。
まだ眠いのに、と、エドガーは目蓋を閉じたまま眉をしかめる。昨夜も眠った時間は遅いのだから、もう少し寝ていてもいいだろう。
隣にいるはずのリディアを抱き寄せようと、エドガーは自分が向いている方向に向かって腕を伸ばした。
緩慢に動かしながら、いくら伸ばしてもシーツの感触しか感じないことを不審に思う。
ゆっくりと重い目蓋を上げると、ベッドの上にリディアの姿はなかった。
「え……」
まだ朝も早いのに。どうしたのだろう、と心持ち焦って背後を振り向こうとしたら。

むぎゅ。

「え」
何かを肩で押し潰したような感覚がして、慌てて体勢を元に戻す。すっかり眠気が覚めたエドガーは、なるべく身体が動かないように固定して、首を後ろに巡らせた。
早朝の薄暗さの中で柔らかな色合いを持った、キャラメル色の頭が見えた。
起こしてしまったか、痛くなかったか、そんなことを心配しながら身を起こそうとしたけれど、胴にリディアの腕が回っているのに気づいて、驚くと共に動くのを躊躇する。
珍しくも抱きしめてくれた腕を振り解くなんて、もったいない。
結局エドガーは、リディアが変わらず健やかな寝息を立てているのを確認すると、元のように横になり、リディアの腕が自分から外れないように引き寄せながら、ゆっくり彼女の方に身体を反転させた。
なんで背後にリディアがいるのだろうと思ったけれど、どうやら背中を向けたのは自分らしい。
抱き合った後、いつもと同じようにリディアを腕に抱え込んで横になったけれど、すうっと彼女が寝入ってしまったから、負担にならないように腕を解いたのだ。
腕枕をするにしても、抱きしめて眠るにしても、夜の間中その体勢でいるのはちょっときつい。疲れて眠ったリディアをますます疲れさせるのは忍びない。
だいたいリディアは、恥ずかしいと言って腕枕を嫌がる。腕を枕にすることも、寝ころびながら至近距離で視線を交わすのが恥ずかしいらしい。
そんなリディアも可愛いなと思うエドガーだけれど、そうやってリディアが嫌がるから、抱きしめて眠りたいときは胸に彼女の頭を抱え込むようにしている。
今も、向き合ったリディアを抱きしめると、エドガーの鎖骨のあたりに彼女の額がくる。
少し絡まった長い髪を丁寧に解きながら手で梳いていると、リディアが小さく呻いて身じろぎした。
背中に回った腕がもぞもぞと動く。細い指先が、たどたどしくエドガーの裸の背中を撫でる感触に思わずぞくりとする。
そういえば、どうしてリディアはガウンを着ているのだろう。
頭から背中、その下へと手を這わせて、ガウンの裾が途切れたあたりの太ももを撫でる。柔らかさと、滑らかな手触りが気持ちよくて触っていると、リディアの腕がエドガーの胸を押した。
キャラメル色の合間から覗く頬が、真っ赤になっている。
「おはよう、リディア」
「どこ、触ってるの……っ」
「まだ早いから、眠ってていいんだよ」
言いながら、ガウンの裾を持ち上げるようにして手を動かすと、リディアは慌ててエドガーから離れようと身を捩る。
くすくすと笑って手を離し、腰をぐっと引き寄せた。
むぐ、と顔をエドガーの胸に押しつけたリディアが変な声を出す。
「脱がせていい?」
「だ……、だめよ」
「直接、触りたいな」
至近距離で、シーツに埋もれて、甘い睦言を囁くように、ひそひそと声をひそめる。
ガウンの上から背中をなぞると、リディアのからだが細やかに震える。抗議をするように押しのけようとするけれど、その力は弱々しい。
もう一押しかな。思いながら、リディア、と耳元で囁いた。
「や……だ、だって、……寒いもの」
可愛らしい言い逃れだと笑おうとして、ふと気づく。
「もしかして、昨夜も寒かった?」
「え? あ、ええと」
「だから抱きついてくれたんだ」
そういえば、リディアが触れていてくれたから、背中がぬくくて気持ちよかった。
やっぱり眠るときは抱きしめておこうかな、と考えていると、リディアが焦ったような声を出す。
「寒いからって、あなたをニコみたいに扱ったりはしないわ」
「……寒いときは、ニコにくっついて眠ってたの?」
「小さいときだけだけど」
なんて羨ましい。思わず両腕を回してリディアを抱きしめると、きゃ、と小さな悲鳴が聞こえた。
じゃあどうしたの、と、理由を尋ねるのも野暮かと思いながら言い募る。
「エドガーが、起きないから……」
「寂しかった?」
「そうじゃなくて。その……気を許してくれてるんだと、思ったら」
もごもごとリディアの声が小さくなる。髪をすくって耳元を覗くと、ほんのり赤い。
愛しくなって、エドガーは笑う。
「わかるよ。僕も、きみの寝顔を見るとキスがしたくなるから」
「キ……」
「リディアから抱きしめてくれて、嬉しかった」
きゅ、と、リディアの頭を抱え込む。胸元で彼女がもそりと動いて、細腕がもう一度エドガーの腰に回された。
愛してるよ、と囁くと、微かに笑う気配がする。
「で、脱がせていいのかな?」
「……脱ぐんだったらこのまま起きます」
にわかに口調が改まったリディアに、残念、と息をつく。口元を緩ませたまま、柔らかな頭に頬をすり寄せた。
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コメント
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よかったね、エドガー
甘さとぴんくさが、この季節にちょうど良い感じ
生クリーム入りホットココアのような
ありがとうございました!
通りすがり 2009/11/29(Sun)22:26:38 編集
着々と報われています(´ワ`*)
寒い時は甘くてべたべたしてる話が書きたくなります><(なんか嫌な表現
そんなんだから代わり映えのないシチュばかりになってしまうのですが(笑)存分にくっついていてほしいです^^*
コメントをありがとうございましたv
【2009/12/03 23:09】
このホノボノ大好きです。
こういう朝の風景って幸せの象徴のような気がして、お気に入りです!すごい素敵
今は本編はシリアスなので余計癒されます...。
大分前の作品なのに、コメント失礼しました。
木苺 2010/08/10(Tue)00:38:51 編集
嬉しいですv
過去作品までさかのぼってコメントつけてくださってありがとうございます><v
私は眠りしなとか起きしなとかの情景が好きでよく書いてしまうのですが、木苺さんと同じくぼんやりと「幸せの象徴」がそこにあると思っているのだろうなあと、コメントをいただいて感じました。
無防備で、やわらかい時間ですよね。癒されるといっていただけて嬉しいですv
コメントをありがとうございましたv
【2010/09/13 22:52】
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