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ニコの手ってなんでいろいろ持てるんでしょう。
確か缶詰とか鏡とか持ってましたよね……ドラえもんの原理?(´・ω・`)





「ニコは自分で鏡を持ち歩かないのかい?」
ティールームでのくつろぎの時間。紅茶を飲み終わって毛繕いをし始めたニコにかいがいしく鏡を差し出したレイヴンを見て、エドガーがぽつりと呟いた。
呟いてから、合点がいったようにひとりで頷く。
「そうか、その手じゃ持てないね」
「鏡くらい持てるよ! 猫扱いするな!」
「そのかたちはどう見ても猫だろう……」
フーッと毛を逆立てるニコに、エドガーは呆れ気味に一瞥をくれる。
その横でお茶菓子のクッキーを摘んでいたリディアもエドガーの言葉に同調するように頷いた。
「そういえば、やたら鏡とか窓ガラスを覗いたりするけど、手鏡を持ち歩くことはないわよね」
「まあ、レイヴンが楽しそうだからいいんだけどね」
相変わらずの無表情をしたレイヴンがどこか誇らしげに首肯した。
もうすっかりニコに鏡を差し出すことを自分の役目だと決めている様子に、エドガーは軽く苦笑する。
「僕にだって鏡を差し出したりはしないのにね」
それはエドガーがとくに必要としていないからだけれど、自分にすら焼かない世話を他のものに焼いているレイヴンを見るのは、なかなかに感傷が深い。
身だしなみを終えたニコが、腕を組んでふんぞり返った。
「あんたは自分で持ってんだろ」
「持ち歩いたりしてないよ」
えっ、と声を上げたのはリディアだ。
「エドガー、持ち歩いてないの?」
「とくに必要ないだろ?」
やたらと意外そうな顔をするリディアに、エドガーは首を傾げる。
「自分の顔が大好きなあんたが鏡を持ち歩いてないのが意外なんだよ」
にやにやと笑いながら言うニコにものすごくバカにされている気配を感じて、エドガーはとりあえず手を伸ばして遠慮なく毛並みを乱した。
ぎゃあ! と悲鳴を上げて距離を取るニコを尻目に、失言した、という顔をしているリディアをにっこりと覗き込む。
「リディア?」
「あ、あの……、別にあなたがナルシストとか言ってるわけじゃ」
「なるほど。僕のこと、そんなふうに思ってたんだね」
「違うってば……!」
心外だ、そんなふうに思われてたなんて哀しいよ、と悲壮な顔をしてみせると、リディアは眉尻を下げて慌て出す。
素直な反応に可愛いなあと思いながら、冗談だよ、と笑うと、今度はむうっと頬を膨らませてしまった。
「……でもエドガー。自分の顔、大好きでしょ?」
「いろいろと便利に使ってきたから、嫌いとは言えないけどね」
便利に、というフレーズが悪かったのか、リディアがちょっと眉を曇らせた。
どんな表情のリディアも可愛いと思うけれど、悲しませるのはいただけない。胸元に垂れている柔らかな髪をすくい取って、緩く弄りながら微笑んだ。
「でもだからといって、四六時中眺めていたいとは思わないよ。鏡の中の自分を見る暇があるなら、ずっときみを見つめていたいな」
瞳をじっと覗き込むと、リディアの頬に赤みが差した。
ニコもレイヴンも夫婦のこんな戯れには慣れっこで気にもとめていないけれど、リディアだけが人目を気にして、身を寄せようとするエドガーをさりげなく押し返してくる。
「便利って……こういうふうに、女の子を口説くときにってこと?」
リディアの眉間に皺が寄るのを見て、エドガーは柔らかく笑う。他愛のないやきもちが可愛らしい。
身を乗り出して額に口づけると、細い肩がくすぐったそうに竦められた。
頬を手のひらで包んで、額をあわせる。甘くとける心情のままに瞳を和ませれば、リディアも力を抜いて無防備な表情を見せてくれる。
「その点については役立たずだったかな。肝心のきみはなびいてくれなかったし」
「そんなこと……」
言いかけて、あ、とリディアが口をつぐんだ。
顔が見る見るうちに赤くなる彼女を意外な思いで眺めながら、身体を引こうとするリディアをやや強引に抱き寄せる。
「なびいてくれてたの?」
「な、なびくっていうか……だって、あの、きれい……だから」
目線を逸らしながらぼそぼそと喋るリディアの、滅多にない賛辞に、エドガーは素直に嬉しくなった。
「初めて聞いた。きみにそう思ってもらえるなら、この顔に生んでくれた母親に感謝しなくちゃいけないね」
ありがとう、と満面の笑みで告げると、リディアがおずおずと見上げてくる。恥ずかしげな表情で、それでもふわりと瞳を和ませるリディアに、エドガーは優しくキスを落とす。
「でもやっぱり、鏡を見るくらいなら、きみを見ていたい」
「……あんまり見てたら、きっとすぐに飽きちゃうわ」
「飽きるなんて、絶対ないよ」
今ですら、リディアの些細な一挙一足に魅入られ続けてるというのに。
あいしてるよ、と囁く声が、自分の耳にすら甘く響く。毒を含まない、ただただ柔らかなその声音に、こんなにもリディアが好きなのだと改めて思う。
リディアがなにかを言いかけて、恥ずかしがって視線を逸らした。どうしたの、と引き寄せると、頬を薔薇色に染めたリディアが、エドガーの肩に額をくっつけて、くすぐったそうに笑みを零した。
「あなたのその顔が、いちばん好き」
小さく小さく、ほとんど吐息だけで告げられた言葉に、いま鏡が欲しいなと、こっそり思った。
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コメント
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こんばんは
 甘いですね……! でも最近のお話は雰囲気が全体的に優しくて柔らかな感じで、とても和みます。
 素敵なお話をありがとうございました。
むぅ 2009/10/29(Thu)00:00:48 編集
こんばんは!
レスがものそい遅くて申し訳ありません><
甘いエドリディは和みです(´ワ`*)ディープないちゃいちゃも好きですが、ほのぼのらぶらぶしてるふたりが可愛いと思うのです><
読んでくださってありがとうございますvコメントをありがとうございました!
【2009/11/08 23:00】
無題
鏡の国で・・・のニコとレイブンの鏡のお話をこんな風なシチュエーションで引っ張られるなんて素敵ですね。
凄くありえそうで、そして可愛いです。
M子 2009/10/29(Thu)00:08:43 編集
Re:無題
ニコとレイヴンと、それからケリーも絡んでのコンビはほのぼのでおかしくて大好きです(笑)最初から鏡の話でひっぱってこようと思ったのではないのですが、原作と絡めると筆が進むので、引用(?)させていただいちゃいました><
エドガーが、自分でもびっくりするほど甘い顔をリディアに向けてたら嬉しいなあというお話でした^^*
コメントをありがとうございましたv
【2009/11/08 23:02】
あま~い
甘すぎます! どんなオチ(?)になるかと思ったら、やっぱりエドガーこう来ましたね☆
新刊発売が近いのでそわそわし始めています、私。
こんな甘い会話が繰り広げられるとなると、アシェンバート家の使用人たちは大変ですね~
ありがとうございました。
じゃが 2009/10/29(Thu)00:16:06 編集
あまあまv
エドガーをオチに持ってくると、定番のパターンになっちゃってだめですね!(笑)
新刊はもう読まれたでしょうか? もう本当、二次創作が必要ないくらいあっまあまでしたね…! さすがご本家エドガー、もういろんな意味で予想の斜め上をいってくれました(笑
積極的になるリディアが可愛くて仕方ありません><
コメントをありがとうございましたv
【2009/11/08 23:07】
いい雰囲気
作品通してただよってる雰囲気がエドリディ★
楽しませていただきました
ありがとうございました
通りすがり 2009/10/30(Fri)09:28:39 編集
ほわらぶ
なにを書いてもエドリディになってしまう管理人です(´ワ`)
楽しんで頂けて何よりです! 通りすがってくださってありがとうございますーv
コメントをありがとうございました!
【2009/11/08 23:08】
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