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伯爵と妖精、オリジナルなど。コメント等ありましたらお気軽にどうぞv 対象年齢はなんとなく中学生以上となっております(´v`*)
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伯爵と妖精パロ、新婚さんより


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伯爵と妖精パロ
---新婚さん



エドガーの朝は早い。仕事場は車を走らせて15分という近場にあるくせに、毎日6時半には家を出て行く。新妻に絡むことならばいくらでも勤勉になれる彼は、朝を寝汚く過ごして残業を引き受けるより、前日にどれだけ眠ったのが遅くても早くに起き、夕飯をリディアと一緒に食べられるように日々頑張っている。
そんなわけで、リディアの朝も早い。エドガーがいくら眠っていてもいいといっても、寝ぼけ眼を一生懸命こすりながら首を横に振って起き出してくる。そうして夫想いの奥方は、エドガーのために一般家庭に並ぶようなささやかな朝食を作り、彼が「行ってきます」と言って出て行くのを玄関で見送るのだ。
「じゃあリディア、今日も夕食に間に合うように帰ってくるから」
「ええ、でも、お仕事が忙しいなら無理しないでね。先に食べたりしないで、ちゃんと待ってるから」
「ありがとう。リディアも、僕がいない間、気をつけて過ごすんだよ」
何で自宅にいるのに気をつけなくてはいけないのかとも思うが、広すぎる邸宅に一日も早く慣れようと探索している最中に迷子になりかけたり、分厚い絨毯に足を取られて転んだり、飾り大の繊細な彫刻に目を奪われて柱にぶつかったりした過去があるリディアは、ちょっと引きつった笑みを返すことにとどめた。そんな様子を、エドガーはおかしげに見る。
「じゃあ、行ってきます」
大きな手のひらが頬に触れるのを合図に、リディアは瞳を閉じる。唇に軽く触れる感触を残して、エドガーは仕事場に出かけていった。



その日は珍しくリディアが外出着姿で玄関に立ち、寝間着姿のエドガーがそれを見送る位置に立っていた。昨晩遅くに、カールトン教授が熱を出して大学を早退したと、ラングレー助教授から連絡を受けたのだ。
「じゃあエドガー、夕方には帰るから。昼ご飯は一応サンドイッチを作っておいたけど、足りなかったらジェフに何か作ってもらってね」
「せっかくの休日なのになあ……来客の予定がなかったら、僕もついて行くのに」
「もう、メースフィールド夫妻にはお世話になってるんだから、そんなこと言わないの。父さまもたいしたことはないみたいだし、あなたまでわざわざ来ることはないわ」
「ひどいな。家族なんだから、心配するのは当然だろ?」
「気持ちだけ、父さまに届けておきます。あなたのお見舞いは大げさすぎるもの」
子どものようにむくれた顔をするエドガーに、リディアは笑って手を伸ばす。えい、とゆるく頬をつねった。くすぐったそうに笑うエドガーに引き寄せられて、出かけると言っているのに彼の腕の中に収まってしまう。
「リディア、行ってきますのキスは?」
「………行ってきます、は、あたしよ?」
「うん。だから、リディアからのキス」
手持ち無沙汰にエドガーの服に触れながら見上げるリディアを、彼は実に楽しそうに覗き込む。予想外のことを言われたリディアは、ぽかんとした顔のまま固まってしまった。
「新婚夫婦としてさ、出かける前の挨拶は必須だろ?」
にこにこしながら抱きしめる腕の強さを強めてくるエドガーに、リディアは逃げ場を失った気分になる。固まってしまったリディアのことでさえ彼は愛おしげに見守るものだから、リディアから動かなければいつまでもこのままだ。じわじわと頬に熱が集まるのがわかる。
でもだからといって、自分からキスだなんて、………したことはあるけれど、改めてねだられると羞恥心がかって動けない。

結局顔を赤くしたリディアが玄関の扉から外に出たのは、それからたっぷり10分経った後だった。
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