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か、どうかは知りませんが^^
現代新婚さんパロです。新婚さんになる前日のお話。
拍手コメントでいただいたネタ(?)を使わせていただきました…!
インスピをくださってありがとうございました><





結婚式を明日に控えた日の午前、リディアはそわそわした気持ちを抱えながら、馴染みになった豪邸の一室にちょこんと座っていた。
ここがもうすぐ自分の住居となるのがまだ信じられない。エドガーとの生活も、実質的にセレブの仲間入りを果たすことも、まだ全然実感できていなかった。
雲を掴むような話だったはずなのだ。手に掴んだものがどんな形になるのか、想像できないのは当たり前のように思う。
エドガーはそんなリディアを見守りつつ、実際には早く実感を持ってほしいと、少し焦れているようだけれど。
こんこん、とドアがノックされて、リディアはぱっと顔を上げる。
「リディア、お茶が入ったよ」
「ありがとう。……あ、手伝うわ」
「お客さんでいれるのは今日までなんだから、もてなさせてくれ」
立ち上がりかけたところをやんわり制されて、またぽすんと柔らかなクッションに身をゆだねた。
エドガーの私室の、このソファはリディアのお気に入りだ。丸いフォルムによくきいたスプリング。そこに弾力のある円筒形のクッションが置いてあるのがまたいい。
もうすっかり癖になってしまった動作でクッションを膝に乗せて手慰みに弄っている。リディアがエドガーの優雅な動作に見惚れている間に、紅茶が綺麗に色づいた。
「さあどうぞ。ミルクはいる?」
「ええ。あ、お砂糖はいいわ……あの、ごめんなさい、お菓子も」
「今日くらい、いいんじゃないか? ひとつふたつ食べたところで、ドレスがはいらなくなるなんてことないよ」
くすくすと笑いながら、エドガーが隣に腰掛ける。むう、とテーブルの上に乗った可愛らしい焼き菓子を見ながら、リディアはしばし葛藤した。
もともとお菓子がなければ生きていけない、なんてことはないのだけれど、ウエディングドレスを綺麗に着こなすために、ここ数週間リディアは完全にティータイムのお菓子を絶っていた。
口にするのはもっぱら食後のゼリーやシャーベットだけなので、そろそろ口寂しくなってきているのは確かだ。
けれど。
「……エステシャンの方と、結婚式までは我慢するって約束したの」
だから我慢、と。自らを戒めるようにテーブルから身を引いてソファに深く埋もれる。
エドガーの指先が前髪をはらって、あらわになった額に彼の唇が落ちてきた。
「肌の一番の天敵はストレスだよ?」
「一番のストレスは甘いものが食べられないことじゃなくて、緊張だもの」
呟いて、温かい紅茶をこくんと飲む。
エドガーが選んでくれた品種は、砂糖を入れなくても十分に甘く感じる上等の紅茶だ。おいしさに眦を緩めていると、肩を引かれてゆっくりと抱き寄せられた。
「うまくいくよ。最高の結婚式になる。リディアも頑張ったし、ポールやロタは今も準備を続けてくれてるからね。だから大丈夫」
包まれて宥められて、ほっこりとしながら微笑んだ。
結婚式には友人たちも来るけれど、エドガーつながりの上院議員や、リディアにはいまいち見分けのつかないお偉いさんもたくさん来るらしい。
リディアの今までの生活とはまったく違う世界へ飛び込んでいくことに、不安も緊張もあるけれど、実際は言葉にするほど深刻に思っているわけでもない。
大丈夫、と言ってくれるエドガーが隣にいれば、リディアはなんとかやっていけると思っている。
「……晴れるといいわね」
「きみが隣にいてくれれば、天気なんて関係ないな」
こめかみにキスを受けて、くすくすと笑う。
紅茶が零れちゃう、と抗議するまで、しばらくじゃれつくような戯れが続いた。
「あ、ねえエドガー。ブーケトスなんだけど、やっぱり前を向いたまま投げようと思うの。後ろ向きで投げてみたんだけど、全然飛ばなくて」
「そんなすごく飛ばす必要はないよ?」
「わかってるわよ。でも、1メートルも飛ばないのよ? 地面に落ちちゃうわ」
それは困ったね、と笑いながら、エドガーがふと首を傾げる。
「サプライズでロタにあげるっていう話はどうなったの?」
「だってロタ、いらないって言うんだもの」
「まあ、彼女ならそう言うだろうけど……残念だな、からかおうと思ってたのに」
「……あなたがそういうことするから、もっと嫌がるんじゃないかしら」
「ロタの神経がそんなに細いわけないだろ?」
言い切るエドガーを、ちょっとまじまじと見てしまう。
エドガーとロタの関係は喧嘩仲間とでも言うのだろうか。ロタが絡むと、エドガーがいつもよりも大人げなく振る舞うので、ちょっと楽しい。
「エドガー、ロタのこと好きよね」
「……リディア、気持ち悪いこと言わないでくれ」
「だって、仲よしじゃない」
大好きな友達と大好きな人の仲がいいのは嬉しい。にこにこと笑うと、エドガーはひとつ息をついて肩を竦めた。
「正面を向いて投げるなら、目隠ししてあげるよ。それなら後ろ向きとそんなに変わらないんじゃないかな」
「わかったわ」
それでね、あとはね、と、話を続けようとするリディアにエドガーはちょっと苦笑する。リディア、と柔らかく名前を呼ばれて、視線を合わせた。
「明日に備えてリラックスするためにって、ロタたちがくれた時間だろ? あんまり気負わないで」
「だって……考えないなんて無理だわ」
まあ、そうだろうけど。ひとつ頷いたエドガーは、リディアの気を逸らそうとしたのか、不意に違う話題を振ってきた。
「ブーケトスと言えば、リディア、ガータートスって知ってる?」
ちょっとやってみたいと思ってるんだけど。と、なんだかきらきらした顔で微笑まれて、リディアはちょっと警戒した。
ふたりの結婚式だし、リディアの提案はほとんど受け入れてもらっているから、エドガーがやりたいというのなら叶えてあげたい……けれど、彼は突飛なことでも普通に言い出すから、二つ返事では頷けない。
「ガーターって……あの、……下着の?」
「結婚式で使うのは、装飾用のガーターベルトだよ。ストッキングの上につけるんだって」
「つける、の? え、でも、トスって、投げるんじゃ」
身につけていたら投げれないではないか。困惑するリディアに向かって、だからね、とエドガーは楽しそうに言う。
「新婦が身につけてるガーターを、新郎が取ってあげるんだよ」
「…………」
「ドレスの中に潜り込んで、口でベルトを外すのが正式らしいけど。手だけ入れて手探りで脱がせるっていうのもそれはそれで……」
「絶対! やりません! から!」
顔を真っ赤にさせて爆発したリディアに、エドガーは「えー?」と可愛い子ぶった声を上げる。これは完全にからかっている態度だ。
にやにや笑いのエドガーを、リディアはできるだけ怖い顔で睨みつける。
「アメリカの伝統的な儀式だよ?」
「ここはイギリスなの!」
「イギリスでだって、やってるカップルはいるけどな」
どうしてもだめ? と首を傾けるエドガーに、リディアは力いっぱい頷く。
常識外れというほど度を超した催しではない、とは思う。浮き名を流してきたエドガーがいかにもやりそうなこと、と笑って見てくれる人もいるだろう。
けれど、リディアは嫌だ。というか、無理だ。そうとうに奥手な彼女にとってはエドガーからのキスだって人前では遠慮したいと思うのに、結婚式でドレスの中に潜り込まれるなんて、耐えられるわけがない。
エドガーだって、リディアが絶対に嫌がるとわかってるのに、どうしてそんなことを言い出すのだろうか。
ぐるぐると考えている内に羞恥と興奮で涙が出てきたらしい。視界が曇ったと思ったら、エドガーの慌てた声が聞こえてきた。
目を瞬かせたら、ぽろり、と頬に涙が落ちた。
「リディア、心配しなくても無理強いなんてしないよ。泣くほど嫌だったの?」
「い、嫌だけど……これは、違うの」
ぎゅっと抱きしめられた腕の中で、すん、とはなをすする。そうしてこっそり反省した。
「あたし、あなたに頼りっきりなんだわ……」
「全部、任せてくれて構わないよ。君が頼ってくれるのは嬉しい」
「ううん。そんな一方的なの、嫌」
嫌だけれど、しばらくはエドガーに甘えさせてもらうしかないだろう。
エドガーとの結婚を決めたことは、リディアにとっては大変なことだった。大変な決断を実践するのは、きっともっと大変なことになるだろう。
彼がいてくれるから大丈夫。そう思って歩んできたリディアは、本当に大丈夫になったわけではなくて、大丈夫だとずっと自分に言い聞かせてきているのだ。
だからこんなにも脆い。ちょっとからかわれて、不安を煽られただけで泣いてしまうなんて。
逞しい胸に凭れながら、ごめんなさい、と心の中で呟く。
「ごめんね」
「え?」
「ケリーとロタが、きみのこと不安定になってるって言ってたんだけど、僕にはそんなふうに見えなかったから。一生懸命に計画してる結婚式のことで、からかうなんて考えなしだった」
ごめんね、ともう一度言われて、リディアは狼狽える。
「あ……あたしのリアクションが、オーバーだったのよ。あんなの、泣くようなことじゃないわ」
「それだけリディアが頑張ってるってことだよ。……ロタたちが休憩を作ってくれたことに感謝しなくちゃね。きみは根を詰めすぎるから」
ぽんぽん、と頭を撫でられて、なんだか気恥ずかしくなる。
いったいどれだけの人に、守られて、優しさをもらっているのだろう。
「いっぱい、感謝するわ」
もぞもぞと動いて、エドガーの腕を抜け出した。穏やかに微笑んでる彼をちらりと見て、はにかんで笑う。
「明日……よろしく、ね。エドガー」
「もちろん。こちらこそ、よろしく」
幸せそうに目を細めたエドガーがそっと顔を寄せ、柔らかなリディアの唇に、触れるだけのキスした。
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こんばんは♪
途中まではさわやかなラブラブカップルの雰囲気を醸し出していたのに(笑)どんな時代だとしてもエドガーはエドガーですね^^; ほんわか読ませていただきました☆ありがとうございました。
じゃが 2009/06/10(Wed)00:11:53 編集
こんばんはーv
どんなに爽やかに見えようとエドガーはエドガーなのでした^^* 彼はナチュラルに爽やかな雰囲気を醸し出しながらナチュラルにえぐい(今回はえろい)ことを言ったりするのが魅力だと思っています(え
読んでくださってありがとうございますvコメントをありがとうございましたv
【2009/06/13 00:08】
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